鎌倉将軍府(読み)かまくらしょうぐんふ

改訂新版 世界大百科事典 「鎌倉将軍府」の意味・わかりやすい解説

鎌倉将軍府 (かまくらしょうぐんふ)

建武政府の地方統治機関。上野親王庁ともいう。1333年(元弘3)12月足利直義は成良親王を奉じて鎌倉下向,ここに奥州将軍府と並ぶ軍・行政府を開創した。府は独自の裁許機構を備え関東十国の土地・年貢についての裁判を行ったが,特別な重要案件については関係文書を整えて中央政府に注進した。政所も併設されたらしい。府は制度的には中央政府の出先機関ではあったが,その運営を足利氏が主導したため,実質的には同氏を中心とする武家勢力の拠点となった。翌年1月には吉良貞家,一色頼行,高師秋など足利一門・被官たち39名を関東廂番(ひさしばん)に配置して軍事機構を整えた。鎌倉近辺の反乱鎮定も廂番任務であったと考えられる。35年(建武2)中先代の乱を機に,足利尊氏が中央政府より離反して鎌倉に拠ったため,建武政府の地方統治機関としての府は消滅した。なお制度史上これは室町幕府下の鎌倉府へ連なる。
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百科事典マイペディア 「鎌倉将軍府」の意味・わかりやすい解説

鎌倉将軍府【かまくらしょうぐんふ】

建武(けんむ)政府の地方統治機関。上野(こうずけ)親王庁とも。1333年後醍醐(ごだいご)天皇の命で皇子成良(なりよし)親王を奉じて足利直義(ただよし)が鎌倉に下向し開創。関東10ヵ国の統治にあたった。実質的に足利氏が主導し,同氏を中心とする武家勢力の拠点となった。1335年足利尊氏が建武政府に離反し鎌倉に拠ったため消滅。制度上室町幕府の鎌倉府につながる。→建武新政

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「鎌倉将軍府」の解説

鎌倉将軍府
かまくらしょうぐんふ

建武政権の地方統治機関。1333年(元弘3)12月,足利尊氏の弟直義は後醍醐天皇の皇子成良(なりよし)親王を奉じて鎌倉に下り,関東10カ国を管轄する行政府を開設。これは同年10月に北畠親房・顕家父子が義良(のりよし)親王を奉じ陸奥将軍府を開設したことへの足利方の対抗措置で,これにより鎌倉幕府滅亡後の東国武士を支配下に収め,東国に拠点を築いていた足利勢力が公認されることとなった。職制の詳細は不明だが成良を将軍,直義を執権とする小幕府で,政所を設け,管轄国内に対する裁許機構を備えた。また足利一門や東国武士から構成される関東廂番(ひさしばん)などがおかれた。35年(建武2)7月の中先代の乱に際し,直義は成良を帰京させ,将軍府は消滅。

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旺文社日本史事典 三訂版 「鎌倉将軍府」の解説

鎌倉将軍府
かまくらしょうぐんふ

建武新政府の地方行政組織
1333年,相模国守足利直義 (ただよし) が後醍醐 (ごだいご) 天皇の皇子成良 (なりよし) 親王を奉じて,鎌倉に下向。関東10カ国の統制にあたる。'35年中先代の乱で北条時行 (ときゆき) に攻められ,直義は親王とともに駿河に逃げた。

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世界大百科事典(旧版)内の鎌倉将軍府の言及

【東国】より

…東国国家あるいは東国政権をたえず生み出しつづけてやまなかったのは,こうした西国と異質な東国の社会,生活そのものであった。
[東北の独自性]
 鎌倉幕府を滅ぼした後醍醐天皇の建武政府は〈天下一同〉の支配を目ざしたが,1334年(建武1)早くも成良親王を奉じた足利直義(ただよし)を鎌倉に遣わし,関東8ヵ国に伊豆,甲斐を加えた10ヵ国を統轄する鎌倉将軍府を認めた。これは事実上,東国政権としての鎌倉幕府を継承する機関であったが,これよりさき,後醍醐は義良親王を奉ずる北畠親房・顕家を陸奥に派遣,陸奥将軍府を設けて鎌倉を牽制させている。…

【武蔵国】より

…この分倍河原で敗れた新田軍により,8世紀建立の武蔵国国分寺は焼滅したが,その鎌倉攻めには熊谷,横山,江戸,豊島,武蔵七党など当国武士の活躍が伝えられており,倒幕が武蔵,相模,陸奥,出羽という幕府の直接基盤の武士の動向によって決定されたところに,得宗専制政治の結末をみることができる。したがって建武政権の成立後,年末に成良親王と足利直義(ただよし)の鎌倉将軍府がつくられると,武士たちは歓呼してこれを迎えた。鎌倉将軍府は陸奥将軍府と並ぶ東国10ヵ国の行政裁判機関であるが,《建武年間記》にみえる六番制の関東廂番(ひさしばん)は実務官僚,外様(とざま)有力武将および足利一門とその根本被官よりなり,現実に訴訟裁判に当たっていた。…

※「鎌倉将軍府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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