鎖を環状にして伝動車に巻き付け、2軸間の運動伝達を行うこと。チェーン伝動ともいう。鎖を掛ける車は、鎖がかみ合う歯をもっている。これをスプロケット(鎖車(くさりぐるま))といい、スプロケットの歯一つ一つに鎖を連結しているピン、ローラーが接触し、ピン、ローラーを押して動力を伝える。鎖はスプロケットの歯とかみ合っているので、運動を確実に伝えることができ、ベルトやロープのように滑ることはない。鎖は金属なので、強度があり大馬力の伝動ができる。速度比を確実に保ちたいとき、一つの原動軸から多数の軸に運動を伝達したいとき、低速度で伝達動力の大きい場合によく用いられ、工作機械、自動車、オートバイ、自転車に使用されている。鎖は湿気や熱の影響を受けない利点がある。
しかし、かみ合い摩擦による損傷が大きく、振動や騒音も大きい欠点があるため、高速度の運動伝達には使用されない。動力を伝える2軸間の距離が比較的短く、しかも歯車伝動では都合の悪い場合に使われる。
[中山秀太郎]
ブッシュ鎖、リンク鎖、ころ入り鎖、音なし鎖などがある。
ブッシュ鎖は、鋼製リンクをピンで結合し、やや肉厚のブッシュをはめたもので、構造も簡単であり、また安価でもある。秒速2メートル以下の低速度の運動伝達によく用いられる。鋼製リンクをピン軸の両側に2、3枚ずつ交互に取り付けたものや、ピンとリンクを固定し、次のリンクとブッシュとを固定したものもある。リンク鎖は金属でつくられた環を多数つないだもので、鋳鉄製、電気溶接製、鍛接製があり、鎖車にかけ、荷役機械などの動力伝達に用いられる。ころ入り鎖は、ピン軸に焼入れしたブッシュと、ころをはめたもので、自動車に用いられている鎖のように秒速5メートル以上の高速で、重荷重の伝動に用いられる。ころがスプロケットの歯に接触して力を伝動するので、摩擦抵抗や摩耗が少ない。大きな荷重を伝えるためには、各部分の寸法を大きくするほか、鎖を2列あるいは3列に連結して用いられる。
音なし鎖は、特殊な形をした二つの刃をもつ板状リンクを適当な幅に並べ、ピンで結合し所要の長さとしたもので、刃状の外側の輪郭が直線となっていて、この直線状の刃がスプロケットの歯と接触する。このような鎖とスプロケットによる運動伝達では、多少の製作誤差や使用中のリンクの伸びがあっても、ピンやピンの穴が摩耗しピンの間隔が不ぞろいになっても、リンクが自動的にスプロケットの半径方向に動く。その結果、すべての刃は均等にスプロケットの歯とかみ合い、伝達力の分布がほぼ等しい。かみ合いの初めに衝撃を受けることもなく、運動はきわめて円滑で、騒音も少ない。また、秒速9メートル程度の高速運動もでき、効率もいい。
鎖の掛け方は、二つのスプロケットに掛ける水平掛けでは張り側を上にする。軸間距離が大きい場合には中間に一つ案内車を置き、鎖の垂れを支えるか、または中間に同軸の中立車を置き、2段とする。数段に分けた連動式にする場合もある。
[中山秀太郎]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…回転する軸に取りつけた車に,ベルト,鎖,あるいはロープのような可撓(かとう)性のある長い物体を巻きつけて動力を伝達する方法の総称。ベルトによるものをベルト伝動,鎖によるものを鎖伝動,ロープによるものをロープ伝動と呼び,またベルトを巻きつける車をプーリー(またはベルト車),鎖を巻きつける車を鎖車(またはスプロケット),ロープを巻きつける車をロープ車(または綱車)という。いずれも動力を伝達する2軸間の距離が長いときに,伝動装置の重量,容積が歯車伝動装置などに比べて少なくてすみ,価格も安いので有利となる。…
※「鎖伝動」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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