改訂新版 世界大百科事典 「巻掛伝動」の意味・わかりやすい解説
巻掛伝動 (まきかけでんどう)
wrapping transmission
回転する軸に取りつけた車に,ベルト,鎖,あるいはロープのような可撓(かとう)性のある長い物体を巻きつけて動力を伝達する方法の総称。ベルトによるものをベルト伝動,鎖によるものを鎖伝動,ロープによるものをロープ伝動と呼び,またベルトを巻きつける車をプーリー(またはベルト車),鎖を巻きつける車を鎖車(またはスプロケット),ロープを巻きつける車をロープ車(または綱車)という。いずれも動力を伝達する2軸間の距離が長いときに,伝動装置の重量,容積が歯車伝動装置などに比べて少なくてすみ,価格も安いので有利となる。これらのうちでもっとも広く使用されているのはベルト伝動である。とくに大きい力を確実に伝達したい場合には鎖伝動が使用されるが,騒音が発生することがある。ロープ伝動は軸間距離がとくに大きい場合,例えば50~100mもあるような場合に適している。
ロープ伝動,鎖伝動の歴史は古く,前者はアレクサンドリアのヘロンの著書に,また後者はウィトルウィスの著書の中に記載されている。ベルト伝動の使用された年代を確定することは困難であるが,1700年代の中期の機械の図にははっきりと描かれており,例えばR.アークライトが69年に特許を申請した紡績機にも使用されている。
執筆者:北郷 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報