鏡花縁(読み)きょうかえん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鏡花縁」の意味・わかりやすい解説

鏡花縁
きょうかえん

中国、清(しん)代の長編小説李汝珍(りじょちん)(生没年不詳)作。1828年(道光8)刊行。全100回の口語体章回小説。物語は唐の則天武后の御世、罪を得て俗界に降ろされた百花仙子が、100人の女子となった仲間の花の精たちと科挙に及第し、一堂に会するという筋立てを背景に、官界に志を失った唐敖(とうごう)が妻の兄林之洋(りんしよう)と商船に乗り込み、架空の不思議な国々を巡っての見聞録である。学問好きな女性のいる「黒歯国」、男女逆さまな「女児国」などを通して、男尊女卑、中国の封建的風俗や迷信などを批判している。現代中国でもその点が評価されているが、作者が自ら博識を披瀝(ひれき)するような文章も多くみられ、興趣をそぐ。また架空の国巡りということで、中国版の『ガリバー旅行記』ともいわれる。

[桜井幸江]

『田森襄訳『中国古典文学全集30 鏡花縁』(1961・平凡社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「鏡花縁」の意味・わかりやすい解説

鏡花縁 (きょうかえん)
Jìng huā yuán

中国,清代の白話長編小説。李汝珍の作で1826年(道光6)以前に成立。全100回。唐の則天武后の時代を舞台とし,天界から貶謫(へんたく)された100人の仙女の行方を求めて唐敖(とうごう)が海外諸国を経めぐる話を骨子としているが,後半,100人の仙女たちの博学多識ぶりが披露され,ために,男女平等論を唱えた小説とも評価されている。経めぐる海外諸国は古代地理書《山海経(せんがいきよう)》に見えるもので,異色のパロディ小説ともなっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鏡花縁」の意味・わかりやすい解説

鏡花縁
きょうかえん
Jing-hua-yuan

中国,清の口語章回小説李汝珍 (りじょちん) の作。 100回。道光8 (1828) 年成立。唐の則天武后の時代を背景にしたユートピア小説。官界に志を得ない唐敖 (とうごう) は,妻の弟の林之洋の商船に便乗して異国めぐりをし,さらに唐敖の娘で仏界の百花仙子の生れ変りである小山が,父をたずねて同じような航海をしながら,百花の精を集めて中国に連れ帰るというのが物語の中心。李汝珍は博学で知られた人で,随所に議論が長々と述べられ興趣をそぐが,男尊女卑,纏足 (てんそく) や迷信の弊害について,鋭い批判が投げかけられている。

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百科事典マイペディア 「鏡花縁」の意味・わかりやすい解説

鏡花縁【きょうかえん】

中国,清末の李汝珍(りじょちん)〔1763?-1830?〕作の白話長編小説。100回。1828年刊。唐の則天武后の世,唐敖(とうごう)という書生が商船に乗って海外を遍歴,仙境に入るという話。後半に登場する100人の博学多識な仙女たちにより,男女平等論を唱えた小説ともいわれる。

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