長洲(読み)ながす

精選版 日本国語大辞典 「長洲」の意味・読み・例文・類語

ながす【長洲】

  1. [ 一 ] 兵庫県尼崎市の地名。古くは淀川の河口にあたった。
    1. [初出の実例]「なかすのはまに出でて、網引かせなど遊びけるに」(出典:平中物語(965頃)三五)
  2. [ 二 ] 熊本県北西部の地名。有明海に面する。干拓・埋立地が多く、金魚の産地として知られる。

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日本歴史地名大系 「長洲」の解説

長洲
ながす

奈良時代に成立した奈良東大寺領猪名いな庄の南端の海岸部に形成された砂洲の浜地。江戸時代の西長洲にしながす村・中長洲なかながす村・東長洲村を遺称とする。「日本書紀」履中天皇五年一〇月一一日条によれば、皇妃が没したのは宗像三女神に奉った筑紫国の車持部を車持君が自らのものとした祟りであるとして、天皇は「則負悪解除善解除、而出於長渚崎、令祓禊」と車持君に命じて長渚崎で禊をさせたという。発掘調査による遺物の出土状況から、八世紀末以降、漁業を主とする人々の集落が形成されていったことが明らかとなっている(「尼崎市文化財調査報告第一四集尼崎市金楽寺貝塚II」尼崎市教育委員会・一九八二年)。長徳四年(九九八)二月二一日に備前国鹿田しかた(現岡山市)梶取佐伯吉永が検非違使庁に提出した解(三条家本北山抄裏文書)には、「長渚浜」に住む「高先生秦押領使」らが大風によって難破した船の水手と共謀して、その積荷を奪い取った事件の経緯が述べられており、一〇世紀末には漁民だけではなく、海賊的な行為を行うような武装集団や海運に携わる人々なども住むようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「長洲」の意味・わかりやすい解説

長洲(町)
ながす

熊本県北西部、玉名郡(たまなぐん)にある町。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)清里村の一部を編入、1957年腹栄(ふくえい)村と合併。荒尾丘陵の南端からなる北東部を除けば、全域沖積低地ならびに干拓・埋立地からなる。干拓地はおよそ400年間にわたって造成されてきたもので、沖積低地とともに現在も稲作栽培地の中核をなしている。埋立地には、1963年から数次にわたって臨海工業地区が造成され、造船、金属加工などの工場が立地している。埋立てを免れた北西部海岸の沖合いは有明ノリ漁場で、潮の干満により見え隠れする網ひびは晩秋から冬にかけての風物詩ともなっている。また、ノリ漁場と臨海工業地区とを仕切るように位置する長洲港は熊本県管理の地方港湾で、対岸島原半島の多比良(たいら)港との間にフェリーが運航しており、年間約60万台の車と旅客17万5000人を運んでいる。北東部の丘陵地には臨海工業地区に通う人々の住宅団地が立ち並び、北西部の旧長洲町の町並みと際だった対照をなす。町域の中央をほぼ東西にJR鹿児島本線が走り西部には長洲駅がある。全国的に知られたものに、オランダシシガシラを生み出した金魚養殖と、四王子神社(しおうじじんじゃ)で行われる破魔弓(はまゆみ)祭(的(まと)ばかい)とがある。面積19.44平方キロメートル、人口1万5372(2020)。

[山口守人]



長洲
ながす

大分県北部、宇佐市駅館(やっかん)川河口右岸の漁業・商業地区。旧長洲町。アカエビ漁、ノリ・貝類養殖の漁港醸造、製麺(せいめん)業もある。

[編集部]

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改訂新版 世界大百科事典 「長洲」の意味・わかりやすい解説

長洲[町] (ながす)

熊本県北西部,玉名郡の町。人口1万6594(2010)。荒尾市の南に接し,島原湾に面する。浦川の沖積低地の前面は近世以降の干拓地である。1965年ころから埋立地に造船,軽金属などの工場が進出して臨海工業地域が形成され,半農半漁の町の様相が一変した。浦川河口付近の砂州上ではキンギョ,ニシキゴイが養殖され,全国に出荷される。四王子神社で1月15日に行われる破魔弓神事の〈的(まと)ばかい〉は神体を安置した円座を奪い合う勇壮な裸祭である。湾岸近くの腹赤(はらあか)はかつて腹赤浜とよばれ,この地に産する腹赤魚が天皇に献じられたという。腹赤魚はタイともマスともされるが不明である。鹿児島本線が通じ,長洲港と島原半島の長崎県雲仙市の旧国見町多比良(たいら)港との間にフェリーが就航する。
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百科事典マイペディア 「長洲」の意味・わかりやすい解説

長洲[町]【ながす】

熊本県北西部,玉名郡の町。有明海に臨み,刺網・一本釣漁業のほかノリの養殖を行う。鹿児島本線が通じ,島原半島の雲仙市多比良(たいら)港間にフェリーボートも通じる。工業用地の埋立が進展し,大型企業の進出にともない,工業都市へと変貌。四王子神社の破魔弓神事〈的(まと)ばかい〉は裸祭として有名。19.43km2。1万6594人(2010)。

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普及版 字通 「長洲」の読み・字形・画数・意味

【長洲】ちようしゆう

うちつづくすはま。

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世界大百科事典(旧版)内の長洲の言及

【宇佐[市]】より

…大分県北部にある市。1967年四日市,長洲,宇佐,駅川の4町が合体,市制。人口5万0032(1995)。…

【駅館川】より

…大分県北部を流れる川。県中央部の日出生(ひじゆう)台から北流する恵良(えら)川が,東方の塚原盆地から北流する津房(つぶさ)川を院内町三又で合わせて駅館川となり,中津平野を経て宇佐市長洲(ながす)で周防灘に注ぐ。総延長45km,流域面積350km2。…

【野原荘】より

…肥後国玉名郡北西部(現,熊本県荒尾市,玉名郡長洲町)にあった宇佐弥勒寺領の荘園。《中右記》永久2年(1114)3月18日条にはじめて荘名が見えるが,立荘の経緯は不明。…

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