依代(読み)よりしろ

精選版 日本国語大辞典 「依代」の意味・読み・例文・類語

より‐しろ【依代】

  1. 〘 名詞 〙 神霊が出現するときの媒体となるもの。神霊の寄りつくもの。正月年神の依代としての門松などのような特定枝葉や花・樹木・岩石、あるいは形代(かたしろ)・よりましなど、きわめて種類が多い。

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百科事典マイペディア 「依代」の意味・わかりやすい解説

依代【よりしろ】

神のよりつく物をいう。神霊が降臨して,その意志を伝えるためには憑依(ひょうい)体を必要とするとの信仰に基づく。山,岩石,樹木,御幣,動物,人間などがあてられる。神社では普通,依代を霊代(みたましろ)と呼び,神像,鏡,御幣,石などをあてる。依代が人間である場合を尸童(よりまし)という。
→関連項目おはけ門松削掛腰掛石精霊流し山車神籬梵天みてぐら

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「依代」の意味・わかりやすい解説

依代
よりしろ

神霊のよりつく代物。尸童(よりまし)が人間であるのに対して、依代は物体をさす。それには神聖な標識として、樹木や自然石、あるいは幣串(へいぐし)など種類は多い。依りは神霊の憑依(ひょうい)を意味し、代は物のことであるから、何物によらず神霊がよりつくことで神聖化されて祭りの対象になる。神社に祭る神体は霊代(たましろ)と称し、また神符守札の類などもすべて神の依代とみなされるが、古代では神木が神の依代として信仰された。手に取り持つ依代には榊(さかき)が用いられたのも神木(ひもろぎ)の伝統で、『古今集』の採物(とりもの)の歌に「神垣の御室の山の榊葉は神のみ前に茂りあひにけり」とある。古社にはそれぞれ神木として崇信する樹木があって、石上(いそのかみ)、稲荷(いなり)、三輪(みわ)では杉を神杉(かんすぎ)とよび、竜田では楓(かえで)を風神の霊木とし、伊勢(いせ)、熱田(あつた)、日吉(ひえ)、住吉(すみよし)、天神(てんじん)などは松、熊野(くまの)は梛(なぎ)である。また新しくは橿原(かしはら)神宮の橿(かし)があり、これを「いづかし」(厳橿)とよぶのも古代の「ひもろぎ」を伝えたもので、『日本書紀垂仁(すいにん)朝の条に、宮中から奉遷した天照大神(あまてらすおおみかみ)を、皇女倭姫命(やまとひめのみこと)が磯城(しき)の厳橿の本(もと)に祀(まつ)るとある。

[菟田俊彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「依代」の意味・わかりやすい解説

依代 (よりしろ)

神霊のよりつくもの。神霊の出現を示す媒体となるもの。樹木,石,御幣などが依代となることが多い。人間が依代となったときにはよりまし(尸童,依坐)と呼ばれる。依代のあることにより神霊の出現が知られることから,依代となる樹木や石などを神聖視し,これを祭りや信仰の対象とするようにもなる。依代とされる木ではサカキ(榊)が多くみられ,大津市坂本の日吉大社の4月3日の大榊神事では,幹の直径10cmもあるサカキの木を葉のついたまま,依代として用いている。長い棒の先端にシデをつけ,御幣と呼んでこれを依代とすることも多い。村の祭祀で頭家(とうや)となった家にたてられるオハケも依代であり,長野県の諏訪大社で6年ごとの大祭にたてられる御柱(おんばしら)や,変容はしているが京都の祇園祭の山鉾(やまぼこ)もその高く掲げた棒を依代としたものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「依代」の意味・わかりやすい解説

依代
よりしろ

祭りにあたって神霊が依りつくもの,また神霊が意志を伝えるため人間界に現れるときに依りつくものをいう。樹木,石,,柱,御幣,人間,動物などが依代となるが,人間の場合には尸童 (よりまし) という。古く神が神聖な自然の森や樹木に降りて来る信仰があって,その聖域が神社や広場に移動した結果,樹木やその一部を祭場に立てる形式を生じた。神輿 (みこし) とか山車 (だし) のもとの形は,こうした神の依りついた樹や枝を輿に乗せて神が巡幸することを意味したが,次第に装飾化して現在は神輿の屋根に名残りをとどめている。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「依代」の解説

依代
よりしろ

神霊がよりつくもの。祭ごとに来臨すると考えられた神が,これを媒体にして来臨する。山岳・樹木・岩などの自然物や,幟(のぼり)・御幣(ごへい)・神輿(みこし)・山車(だし)などの祭具,案山子(かがし)・農具などの生産用具などがあてられる。長野県諏訪地方の諏訪大社をはじめとする神社の御柱(おんばしら)行事にたてる御柱,小正月の行事に飾る作り物,祭場にたてる柴挿しなどの例がある。人間が依代となる場合には憑坐(よりまし)という。

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世界大百科事典(旧版)内の依代の言及

【いけばな】より

…花道と総称されたこともあったが,現在では〈いけばな〉の呼称が一般化され,国際的にもイケバナで通用している。
[いけばな成立以前]
 植物としての花の生命力に神の存在を見ようとする素朴なアニミズムを基盤として,民俗学の資料などに見る依代(よりしろ)としての花が,まず日本人と植物とのあいだに成立する。常緑のサカキや後世のマツの依代,また春の山入り行事に手折られた花木などはその例証といえよう。…

【採物】より

…神楽などで舞人が手にして舞う神聖な物。本来は神の降臨する依代(よりしろ)とされ,それを採って舞うことは清めの意味があり,同時に舞人が神懸りする手だてともなる。天の岩戸における天鈿女(あめのうずめ)命の神懸りも,笹葉を手草(たぐさ)に結ったとか(《古事記》),茅(ち)を巻いた矛を手に俳優(わざおぎ)した(《日本書紀》)とあり,採物を用いていたことが知られるが,採物の名称は平安時代の御神楽(みかぐら)歌に見えるのが早い。…

【柱】より

…日本の旧家屋は田の字型に配列された4部屋を基本単位とするといわれるが,その接し合う中心の柱を〈大黒柱〉や〈中(なか)柱〉などと呼び,神がいるとされた。また伊勢神宮正殿の床下中央にある心御柱は建築構造上の意味をもたぬ柱だが,神の依代(よりしろ)であり神宮の聖なる中心と考えられている。このように中心を象徴し神の依代となる柱の原形は,建築そのものとは無関係な,神事の際に祭場のしるしとして屋外に立てられた木や柱にあろう。…

※「依代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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