闘茶(読み)とうちゃ

精選版 日本国語大辞典 「闘茶」の意味・読み・例文・類語

とう‐ちゃ【闘茶】

〘名〙
① 飲茶遊技。本茶・非茶などを判じて茶の品質優劣を競って勝負を争った遊び。鎌倉末期に宋より輸入され、南北朝、および室町時代に流行した。
異制庭訓往来(14C中)「擬曲水宴、可闘茶会之由承候」 〔茶録〕
② 茶を飲んで、その味から茶の銘柄を判別する遊び。
※旅‐昭和九年(1934)一一月号・首代金廿万両〈正木直彦〉「進んでは又『闘茶(トウチャ)』といふのが行はれるやうになった。これは茶の味を飲み分けるゲームであって」

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デジタル大辞泉 「闘茶」の意味・読み・例文・類語

とう‐ちゃ【闘茶】

茶の産地や品種を飲み分けて勝負を競う茶会の一種。宋から渡来し、鎌倉末期から南北朝時代にかけて盛んに行われた。現在の茶かぶきにその形がうかがえる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「闘茶」の意味・わかりやすい解説

闘茶
とうちゃ

茶の産地別による色や味を飲み分けて勝負を競う茶会の一種。鎌倉時代の末から室町時代中期の足利義教(あしかがよしのり)のころにかけて爆発的な流行をみせた。闘茶の起源は中国の宋(そう)代にみることができる。蔡襄(さいじょう)(1012―1067)は『茶録』のなかで「闘試」の語を使い、同じく范仲淹(はんちゅうえん)(989―1052)に「闘茶歌」があって、茶の色による識別や茶と水との融合度をみることから始まり、茶の味のよしあしを争うところにまで及んでいた。わが国では、『建武式目(けんむしきもく)』(1336)によって群飲佚遊(いつゆう)が禁じられたものの、婆娑羅(ばさら)の風流は盛んになり、「二条河原(がわら)落書」によって茶香十炷(じっしゅ)の盛行が口ずさまれるようになった。当初は『師守記(もろりき)』の暦応(りゃくおう)3年(1340)条に「十種本非張行懸(賭)物(ほんぴはりおこないかけもの)等被出之(これをいださる)」とあり、『祇園社家(ぎおんしゃけ)記録』にも「本非十種茶」の勝負記録があって、賭け物を出し合って本非茶勝負が行われていた。これは、本茶である栂尾茶(とがのおちゃ)と、非茶であるそれ以外の産地の茶を飲み分けて勝負を競う遊びである。のちには本非にかかわりなく4種十服の茶勝負である十種茶(有試茶と無試茶)が中心になる。有試十服茶は4種の茶を使い、まず3種の茶を4服ずつ包み、他の1種は客茶として1服包んでおく。ついで3種の茶の1服ずつを試し飲みして、残りの10服を飲み当てていく遊びである。五十種茶、七十種茶、百種茶というのも、十種茶を5回、7回、10回と催すものである。闘茶の遊び方には以上のほか、七所勝負や、六色茶、三種銘茶、四季々茶、源氏茶、系図茶などがある。その遊び方については不明な点が多い。しかし、書院茶や草庵(そうあん)茶の草創とともにしだいに衰退し、千利休(せんのりきゅう)時代にはかぶき茶といわれて残滓(ざんし)だけになっていたが、江戸時代中期に千家七事式の一つに「茶歌舞伎(かぶき)」として取り上げられ現在に至っている。

[筒井紘一]

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改訂新版 世界大百科事典 「闘茶」の意味・わかりやすい解説

闘茶 (とうちゃ)

中国宋から渡来し,鎌倉末期から室町中期にわたって爆発的な人気をよんだ茶会の形式の一つ。回茶とも貢茶とも別称されることがある。本茶〈栂尾(とがのお)茶〉と非茶〈それ以外の産地の茶〉とを飲み分け,点数をつけながら賭物(かけもの)を取り合う一種の博奕(ばくち)であるため,茶勝負とか茶湯勝負ともいわれた。そのもとは中国の宋代の茶法に発しており,水質や茶の品種が争われたりしていた。日本に伝えられてからは,はじめ〈本非茶勝負〉と呼ばれていたが,のちには〈四種十服茶〉とか〈十種茶〉とか〈十服茶〉などと呼ばれるように,三種一客という4種類の茶で10服飲んで,それを飲み当てることを基本とするようになった。そのため群飲佚遊として《建武式目》で禁制されたり,〈二条河原落書〉で批判されたりしたが,ますます盛んになっていった。そして婆娑羅(ばさら)大名佐々木道誉に代表されるように〈七十服茶〉とか〈百服茶〉にまでエスカレートしている(《太平記》)。これは〈十種茶〉を7回,10回と重ねていくものであり,一晩中遊ぶ場合もあったらしい。闘茶の種類は以上のほかに〈二種四服〉〈三種釣茶〉〈四季々茶〉〈六色茶〉〈源氏茶〉〈系図茶〉〈七所勝負〉などの名があげられる。闘茶は室町時代中ごろから衰えはじめ,残滓として江戸時代にもうけつがれ〈カブキ茶〉といわれていたが,中ごろに茶道の心技錬磨のために〈千家七事式〉が考案されるや,味覚の修練に〈茶カブキ〉として取り上げられ,今日に至っている。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「闘茶」の解説

闘茶
とうちゃ

茶の味を飲みわけて勝負する中世の遊戯。鎌倉末期には各地で茶の栽培が行われるようになり,品質に差が生じた。日本の茶の栽培は栂尾(とがのお)(現,京都市右京区)に始まったという説が信じられ,その茶が品質においても最高とされた。栂尾の茶を本茶とし,他地域のものを非茶として,初期には本非を飲みあてる遊戯が行われ,のちには3種ないし4種以上の同異をあてるものに発展した。莫大な賭物や贅を尽くした飲食をともない盛行したが,侘茶(わびちゃ)の発生によってすたれた。今日でも茶かぶき(茶歌舞伎・茶香服)の形で伝統が残る。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「闘茶」の意味・わかりやすい解説

闘茶
とうちゃ

鎌倉時代末期に宋からもたらされ,南北朝時代から室町時代中期にかけて,武家,公家,僧侶間で流行した飲茶競技。各産地の茶を飲み,その本茶 (栂尾のち宇治) か非茶かを判断し,茶の優劣を競う茶寄合。十種茶,百服茶,本非茶勝負などともいい,「二条河原の落書」に「茶香十しゅ,寄合モ」とある。民衆の間では,一味同心を目的として粗茶を飲む雲脚茶会 (うんきゃくちゃかい) と呼ばれる茶寄合がもたれた。

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百科事典マイペディア 「闘茶」の意味・わかりやすい解説

闘茶【とうちゃ】

宋代の中国から伝来し,南北朝から室町中期にかけて武家・公家・僧侶の間に流行した遊戯。喫茶亭で茶の産地(栂尾(とがのお)の茶を本茶といい,それ以外の産地の茶を非茶といった)・品種・質などを判別して優劣を競った。
→関連項目茶道

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普及版 字通 「闘茶」の読み・字形・画数・意味

【闘茶】とうちや

茶品くらべ。

字通「闘」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の闘茶の言及

【茶道】より

… 喫茶の普及は茶の薬用効果よりも嗜好品としての茶の発展を意味していた。やがて茶は遊戯化し,14世紀初期には闘茶という茶の遊びが生まれた。闘茶は飲茶勝負とも呼ばれたように,茶の味を飲み当てるゲームで,初めは本茶(京都栂尾の茶)と非茶(栂尾以外の茶)を飲み分け,得点によって懸賞が分配される形式であったが,のちには茶の種類を4種にふやし,10服とか70服とか何杯もの茶の味を当てる複雑なゲームとなった。…

※「闘茶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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