精選版 日本国語大辞典 「落書」の意味・読み・例文・類語
らく‐しょ【落書】
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落書とは署名のないもの、無記名のものの意で、歴史的には以下のように二つの意味をもつ。(1)養老律(ようろうりつ)の編目の一つである「闘訟律(とうしょうりつ)」に「匿名の書を投げて罪人を告発する者は徒(ず)二年」とあるように、落書は本来犯罪人を告発する投書をさすものであった。平安から室町時代にかけての寺社では、犯罪者を決める無記名投票が制度化しており、とくにそのなかで起請(きしょう)の形式をとったものを落書起請といった。(2)時局の風刺や権力者を批判、嘲笑(ちょうしょう)した匿名の文章や詩歌。詩歌形式のものを落首(らくしゅ)という。衆人の注目しやすい場所での貼(は)り紙、捨て文、投書によって、間接的に人々に噂(うわさ)を流布させることをねらったもので、政治の動揺期に数多くみられ、公然と政治を批判することのできない民衆の憤りの発露としてつくられた。落し文ともいう。各時代の世論を反映した作品の大部分は、庶民の反権力志向に基づくものであり、史実を側面からとらえ、その本質に迫るものが多い。先駆的例としては、未来を予言する神の声として流布した古代の童謡(わざうた)が知られている。時勢を風刺した中世落書の白眉(はくび)は「此比(このごろ)都ニハヤル物 夜討(ようち)強盗謀綸旨(にせりんじ)」で始まる「二条河原(がわら)落書」(『建武(けんむ)記』)である。これは、建武の新政に伴う政治の混乱ぶりを百七十余句のなかで巧みに嘲弄(ちょうろう)、批判したもので、南北朝前後の世情を探るうえで貴重な史料とされている。近世に入ると、町人文学の盛行に伴い、落書は、謡曲、物は尽くし、番付型など多様な形態をとるようになり、作品数も激増するが、その内容は卑俗化し、文芸的価値は乏しくなる。
[錦 昭江]
「落書」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
本来は犯人告発のための匿名の投書をさしたが,一般的には社会や権力者などを批判・諷刺した匿名の文章や詩歌をいう。とくに和歌の形式のものを落首(らくしゅ)というが,中世には区別せずすべて落書とよばれたようである。「建武年間記」に載る「二条河原落書」が著名。これは後醍醐天皇と建武新政府を非難した内容で「此比(このごろ)都ニハヤル物,夜討強盗謀綸旨(にせりんじ)」と始まり,七五調の物尽しの形式になっている。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…古代では,正倉院に伝わる写経の片すみに描かれた〈大大論〉と書き入れのある人物のカリカチュアがよく知られている。こうした身近な人物の特徴をとらえた戯画は天平期の落書(らくがき)(文書の余白や紙背,建築の目だたぬ部分に描かれる)に最も多いモティーフであった。法隆寺金堂の天井板や唐招提寺金堂の梵天像台座に隠されていた落書には,人物にまじって性器や性交場面の描写も見られて興味深い。…
…詩歌の形式によるものは,とくに〈落首(らくしゆ)〉といいならわしてきている。また,いわゆる〈いたずらがき〉としての〈らくがき〉(落書,楽書)は,〈らくしょ〉が変化したものであるが,本来のそれとは区別されている。 落書の歴史は平安時代の初頭に貴族階級のあいだで始まり,しばしば政争の具に利用されて,昇任・栄転をめぐる官僚どうしの確執・暗闘にひと役かっていたようであるが,〈世間に多々〉広まった落書として有名なのは,嵯峨天皇の時代(9世紀初め)の〈無悪善〉という落書で,史上に名だかい学者の小野篁(おののたかむら)がこれを〈悪(さが)無くば善(よ)かりなまし〉と解読したという(《江談抄》)。…
…転じて,記述や描写の目的を定めずに遊び心で描く態度をさす。日本では,〈落書〉を〈らくしょ〉と読んだ時代が長く,そもそもは〈落首(らしじゆ)〉に由来することばである。落首は,詩歌の形で時事や人物を諷した章句を門や塀にはったり,道に落として世間の評判をたてようとする行為や作品をいった。…
※「落書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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