闘鶏神社(読み)とうけいじんじや

日本歴史地名大系 「闘鶏神社」の解説

闘鶏神社
とうけいじんじや

[現在地名]田辺市湊

田辺市街の東部に連なる小丘陵の西端、仮庵かりほ山の北麓にあり、ほぼ北向きに鎮座祭神伊邪那美いざなみ命をはじめ熊野一二神。旧県社。江戸時代には新熊野いまくまの闘鶏権現社といわれ(続風土記)、ほかに新熊野十二所権現・新熊野鶏合とりあわせ権現などの称もあった。現在も権現さんの称で親しまれる。なお寛政六年(一七九四)の新熊野十二社大権現垂跡私記(地蔵寺蔵)によると神名・本地仏は熊野本宮と同じである。

〈大和・紀伊寺院神社大事典〉

〔創祀・沿革〕

社伝によれば允恭天皇八年創祀といい、「続風土記」は熊野別当一八代湛快のとき、熊野三所権現を勧請したと記す。湛快の子湛増(二一代熊野別当)は当社付近に坊舎を構えたと伝え、以降熊野別当家の一流(田辺別当家)が代々当地に在住、当社を管掌したと考えられる。湛増の田辺在住は、「吉記」承安四年(一一七四)九月二八日条に熊野参詣道程を記して「着田辺湛増法眼房」とみえることにより確認される。熊野別当家は「尊卑分脈」によれば藤原師尹の流れをくみ、湛増は実は源為義の子で妻は源頼朝の叔母にあたるという。「平家物語」巻四(源氏揃)によれば、源行家が諸国の源氏と連絡をとり蜂起の準備を進めていることを知った湛増は、自分は平氏に恩ある身だとして一千余騎を引具して源氏方の那智新宮を攻めている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「闘鶏神社」の意味・わかりやすい解説

闘鶏神社
とうけいじんじゃ

和歌山県田辺(たなべ)市湊(みなと)町に鎮座。伊邪那美命(いざなみのみこと)、天照皇大神(あまてらすすめおおみかみ)など16柱を祀(まつ)る。古くは田辺の宮と称し熊野(くまの)三山への中継地として熊野権現(ごんげん)を祀り、新熊野権現(いまくまのごんげん)ともよばれて、三山詣(もう)でにかえる参詣(さんけい)客さえみられ、三山の別宮的存在であった。源平合戦の際、壇ノ浦の戦いに臨んで熊野水軍の力を両軍より援軍として請われた熊野別当湛増(たんぞう)が、どちらに味方するか、赤鶏と白鶏とを七番闘わせ、すべて白鶏が勝ったので源氏に味方することに決定した神社で、それ以来、新熊野雞合大権現(とりあわせだいごんげん)の呼称が生まれ、明治維新ののちに闘鶏神社と改称された。旧県社。7月24、25日の例祭には、神輿渡御(みこしとぎょ)、笠鉾(かさほこ)巡行流鏑馬(やぶさめ)神事、潮垢離(しおごり)神事などが繰り広げられ、田辺祭(笠鉾祭とも。県指定無形民俗文化財)とよばれて全市をあげてにぎわう。

[白山芳太郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

デジタル大辞泉プラス 「闘鶏神社」の解説

闘鶏神社

和歌山県田辺市にある神社。伊邪那美命(いざなぎのみこと)、天照皇大神などを祀る。神社の名は、壇ノ浦合戦の際、熊野別当湛増(たんぞう)が、源氏と平氏のどちらに味方するべきか神意を確認するために、赤を平氏・白を源氏に見立てた紅白7羽ずつの鶏を闘わせた故事にちなむ。「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコの世界遺産に登録されている。国指定名勝「南方曼陀羅の風景地」の構成地のひとつでもある。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の闘鶏神社の言及

【田辺[市]】より

… 平安~鎌倉期には左会津川流域に摂関家領三栖(みす)荘,右会津川の中・上流域に醍醐寺一乗院領秋津荘,そして市域西端を流れる芳養(はや)川流域には石清水(いわしみず)八幡宮領芳養荘が成立。湊にある闘鶏神社は,源平合戦に際して熊野別当湛増が,いずれに味方すべきか神前で紅白の鶏を戦わせて占ったという話で著名。また弁慶は湛増の子と伝えられ,当市では弁慶の出身地として祭りが行われる。…

【闘鶏】より

… 日本では平安期にまず宮廷貴族の間で鶏合(とりあわせ)と称して好まれた。記録にも残っている有名な鶏合がいくつかあり,また紀州田辺には闘鶏神社があるほどである。江戸時代には闘鶏用に雄鶏を改良したシャモが導入され,闘鶏は庶民の間での大きな娯楽となった。…

※「闘鶏神社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android