除細動器(読み)じょさいどうき(その他表記)defibrillator

翻訳|defibrillator

日本大百科全書(ニッポニカ) 「除細動器」の意味・わかりやすい解説

除細動器
じょさいどうき
defibrillator

心房または心室が不規則に繰り返し興奮する病態である細動を取り除く(除細動)ための装置総称直流通電による電撃を短時間行って心筋を興奮させ、正常な機能を回復させる電気的除細動がよく用いられ、心腔(しんくう)内通電方式の植え込み(埋め込み)型除細動器(ICD:implantable cardioverter defibrillator)と、体外通電方式の体外除細動器がある。

 植え込み型除細動器は細動を自動的に検出すると同時に直流通電を行うもので、心臓ペースメーカーの機能を備えたものもある。体外式ではAED(自動体外式除細動器)が普及している。AEDは心臓リズムを自動的に解析し、音声ガイドに従って電撃を与えるなどの操作が可能であるため、緊急時には医師救急救命士だけではなく一般人が対象者に使用することもできる。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「除細動器」の意味・わかりやすい解説

除細動器
じょさいどうき
defibrillator

不整脈,特に心室細動心房細動・粗動などを起こしている心臓に瞬間的に強力な電気を直接通じさせ(→カウンターショック),心筋の電気的位相をそろえて細動を除去するための装置の総称。おもに体内に埋め込んで用いる植込型除細動器 IDC; implantable cardioverter defibrillatorと,胸壁の上に電極をあてる自動体外式除細動器 AED; automated external defibrillatorが知られる。IDCは心拍数を常に監視しながら自動的に治療を行なう除細動器で,ペースメーカーの機能を備えたものも多く,重篤な心室性頻脈や心室細動のある人が用いる。AEDは救急時に用いる蘇生用医療装置(→救急蘇生法)で,日本では使用が医療従事者のみにかぎられていたが,心停止から 5分以内に蘇生措置が行なわれることが重要であることから,2004年7月以降に一般人も使用可能になり,駅などの公共施設や人が多く集まる場所への設置が進められた。AEDは音声指示どおりに操作すれば,初めての人でも簡単に使用できる仕組みになっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「除細動器」の意味・わかりやすい解説

除細動器 (じょさいどうき)
difibrillator

不整脈の治療に使われる器械で,主として心房細動(心房の収縮がなくなり細かい波状に動く状態),心室細動(心室の収縮がなくなり細かい波状に動く状態)を正常調律に戻すときに用いられる。心房細動や心室細動は心房筋,心室筋の各部分が電気的にばらばらに活動しているため起こるもので,除細動器は,心臓に直流の高圧電流を流して心臓全体を同時に収縮させた状態におき,全体の足並みを整える。放電する本体と電流を生体に流す電極paddleとからなり,必要な電気エネルギーをワットセカンドWatt secondで表す。100ワット・セカンドは100Wの電力を1秒間供給するエネルギーを意味する。現在用いられている器械の刺激時間は1.5~4.0msec程度であるから,瞬間的にはかなりの高電圧が流れる。体外から刺激する方法と,体内で直接心臓を刺激する二つの方法がある。最大出力は400ワット・セカンド程度のものが多い。心室細動は心停止と同じことで,除細動器による除細動が唯一の救命方法といってよい。
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