明(あかり)障子にはる紙。障子紙の特徴としては,外光を柔らかく室内全体に拡散すること,騒音をさえぎること,外の空気の湿度や温度を適度に和らげて室内に入れること,紙の美しさ,などがあげられる。日光に透かして鑑賞されるため,原料の繊維が整然とそろっている紙が好まれる。そのためには,繊維の並ぶ方向を天地方向のみでなく左右にも均等に向けさせる,すぐれた紙すきの操作が必要となった。江戸時代に障子紙として最高と考えられたのは,美濃の直紙(なおしがみ)で,別に書院紙という名称も生まれ,紋書院のように透しの装飾をした障子紙もすかれた。当時,障子紙として評判の高かった紙は,ほかに周防,陸奥,下野の那須,安芸の広島などからも産した。このような,和紙の市場に障子紙専用として登場してくる紙ばかりでなく,地方で農業の副業としてすかれ,周囲の地域に供給されていた紙も障子紙として使われることが多かった。障子の規格が地域で違うことも,地方の障子紙生産を保護したのである。明治時代以後,明障子はさらに普及したため,障子紙の生産は盛んになり,手すき和紙の半数以上は障子紙となった。1960年ころから,機械すきのレーヨン障子紙が大量に出まわったこと,また生活様式が変わって障子が少なくなったことなどの理由で,手すき障子紙は急速に減少した。現在,手すきの障子紙は,高級な障子紙のみ残っており,美濃紙の本美濃紙・在来書院・改良書院,内山紙の内山書院,土佐紙の土佐障子紙などが生産されている。
→障子
執筆者:柳橋 真
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…すなわち蕨生(わらび)を中心として,上野(かみの),片知(かたち),乙狩(おとがり),御手洗(みたらい),谷戸(やど)などで漉かれている。江戸時代の美濃紙を代表する紙は直紙(なおがみ∥じきし)で,障子紙としては最上級と評価された。障子紙は日光に透かして鑑賞されるため,繊維がむらなく整然と美しく漉き上げられていなければならない。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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