電気が生体に及ぼす作用と、生体によりおこされる電気現象を主として研究する生理学の一分野。神経細胞や筋細胞などの興奮性細胞は、電気刺激に敏感に反応する。しかも電気刺激は、機械的刺激や化学的刺激に比べて、その強度や時間を容易に調節できることなどの利点があり、各種の刺激実験に広く用いられる。また生体の興奮現象は、細胞膜における電気的活動そのもの、またはそれと密接な関連をもつ現象であるため、細胞膜の電気的現象の解析は、興奮の機構解明に重要な役割を果たしている。
生体の電気現象は、発電魚などについて古くから知られていた。1780年イタリアのガルバーニは、カエルの下肢の筋肉が電気刺激で収縮することを示した。さらに銅の鉤(かぎ)で鉄格子につるしたカエルの肢(あし)が鉄格子に触れると収縮することを観察し、これは、筋肉に蓄えられた電気が放電して肢の筋肉を刺激することによると説明した。しかし、同じイタリアのボルタA. Voltaは、その原因が金属の接触電位差にあると主張した。この両者の論争は、生物電気の証明や電池の発明などいくつかの学問的成果を得る契機となった。その後の電子工学の発達と、細胞内電極(細胞内に微少電極を挿入して、電気刺激を与えたり膜電位を測定したりする)の導入などにより、電気生理学は著しい成果をあげつつある。その結果として、静止時には細胞内は外側に対しマイナス60~90ミリボルトの電位差(静止膜電位)をもつこと、興奮時にはその膜電位は一時的におよそプラス40ミリボルトに逆転すること、この活動電位の発生は多くの場合細胞膜のナトリウムイオン透過性が興奮時に一時的に高まるのによること(ナトリウム説)、などが明らかとなった。また膜電位固定法(膜電位を一定に保持し、そのとき膜を横切って流れる電流を記録する技法)を用い、興奮時に膜を通って流れるイオン電流も測定された。このような膜のイオン伝導度の変化は、膜にあるナトリウム、カリウム、カルシウム、塩素など各種イオンの通路(チャンネル)の開閉によるものである。1970年代後半より、膜のごく限られた部分を微小なガラスピペットに吸い付けて電位固定するパッチクランプ法により、単一イオンチャンネルの開閉が、階段状の微弱な電流の変化として測定されるようになった。さらに、チャンネルを構成するタンパク質のアミノ酸配列とイオン透過性の関係も明らかになりつつある。
[村上 彰]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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