神経繊維(読み)しんけいせんい(その他表記)nerve fiber

翻訳|nerve fiber

改訂新版 世界大百科事典 「神経繊維」の意味・わかりやすい解説

神経繊維 (しんけいせんい)
nerve fiber

神経細胞突起には数mmから数cm,ときには1m近くまでの距離にわたりほぼ一定の太さを示すものが多く,そのようないわば索状の突起とこれの覆いをなす構造髄鞘あるいはシュワン鞘など)を合わせたものを神経繊維という。神経繊維の軸をなす,上記のごとき索状の突起を軸索axonと称する。軸索をなすものは,神経細胞体から遠ざかる向きに刺激を伝えるもの(神経突起neurite)であったり,神経細胞体に近づく向きに刺激を伝えるもの(樹状突起dendrite)であったりする。一方,軸索の覆いをなす構造が髄鞘であれば有髄繊維といい,対応する構造がシュワン鞘であったり,少なくとも髄鞘ではない場合は無髄繊維という。一般に,有髄繊維の軸索は太く,無髄繊維の軸索は細い,という傾向がみられる。髄鞘は,末梢神経内ではシュワン細胞中枢神経内では稀突起膠(こう)細胞とそれぞれ称される細胞のきわめて薄くなった細胞質部分が軸索を幾重にもとり囲むことにより形成されるものであり,神経刺激が軸索を伝わるときに生ずる電気現象を周囲より絶縁する作用が強いことから,神経刺激の伝導効率を高めるうえで役立っている。末梢神経における無髄繊維をつくるシュワン鞘は,軸索をただ一重に囲むような,多様な厚さを示すシュワン細胞の細胞質部分にほかならない。中枢神経における無髄繊維において軸索を覆うものは星状膠細胞の細胞質である。

 末梢神経内では神経繊維が肉眼でも識別可能なほどの太さの束をなすが,これがいわゆる神経nerveである。末梢神経内の神経繊維をA型(太い有髄繊維),B型(細い有髄繊維),C型(無髄繊維)に大別し,さらにA型に属する知覚性繊維をAⅠ(筋紡錘腱紡錘からの知覚を伝えるもの。太さ10~20μm,伝導速度70~100m/s),AⅡ(皮膚の触・圧覚を伝えるもの。太さ5~15μm,伝導速度20~90m/s),AⅢ(皮膚および内臓の温・痛覚や血管圧覚などを伝えるもの。太さ1~7μm,伝導速度12~30m/s)の3者に,またA型に属する運動繊維をAα(筋紡錘以外の一般筋繊維に向かうもの。太さ約17μm,伝導速度50~100m/s),Aβ(筋紡錘の内外の筋繊維に向かうもの。太さ約10μm,伝導速度40~60m/s),Aγ(筋紡錘内の筋繊維にのみ向かうもの。太さ2~10μm,伝導速度10~45m/s)の3者に分けることがある。B型繊維に属するものの大部分自律神経系節前繊維であり,太さは3μm以下,伝導速度は3~15m/sとなっている。C型繊維は太さ0.2~1.5μm,伝導速度は0.3~1.6m/sのものであって,自律神経系の節後繊維の大部分,および皮膚と内臓からの痛みを伝えるような知覚繊維の一部分がこれに含まれる。

 単一神経繊維は引っ張られると簡単にちぎれるような性質の,もろい構造である。末梢神経の内部における神経繊維間には膠原繊維(引張り力に対する抵抗性が大である)が多量に存在し,神経の周囲の激しい動きによる神経への悪影響を未然に防いでいる。
神経系
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百科事典マイペディア 「神経繊維」の意味・わかりやすい解説

神経繊維【しんけいせんい】

神経細胞の細胞体からのびた長い軸索突起。普通は数mmから数cmだが,座骨神経では1mに達するものもある。機能上は運動繊維と感覚繊維に大別。構造上は軸索を取り巻く髄鞘という被膜の有無によって有髄・無髄に区別され,そのいずれもが中枢および末梢神経に多数含まれている。神経伝導の速度は有髄繊維のほうが速い。髄鞘には所々に中断部があり,絞輪(ランビエ絞輪)と呼ばれる。また末梢神経では,有髄・無髄に関係なく,神経鞘(シュワン鞘)という被膜が外側をおおっている。神経繊維の起始部および末端部は,髄鞘・神経鞘をともに欠く裸繊維となっている。→シナプスニューロン
→関連項目神経神経系神経鞘腫神経節神経叢

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世界大百科事典(旧版)内の神経繊維の言及

【神経系】より

…また,軸索の末端(軸索終末axon terminal)では,次のニューロンに興奮の伝達が行われる。軸索は一般に長い突起であるから(脊髄から四肢の末端部にまで達するもの,大脳皮質から脊髄の末端部にまで達するものなど),神経繊維nerve fiberと呼ばれることが多い。また,軸索はしばしばリン脂質を主成分とする鞘(しよう)(髄鞘またはミエリン鞘myelin sheath)をかぶっている。…

【神経系】より

…また,軸索の末端(軸索終末axon terminal)では,次のニューロンに興奮の伝達が行われる。軸索は一般に長い突起であるから(脊髄から四肢の末端部にまで達するもの,大脳皮質から脊髄の末端部にまで達するものなど),神経繊維nerve fiberと呼ばれることが多い。また,軸索はしばしばリン脂質を主成分とする鞘(しよう)(髄鞘またはミエリン鞘myelin sheath)をかぶっている。…

※「神経繊維」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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