イタリアの解剖学者、生理学者。動物電気の発見で知られる。1759年、ボローニャ大学で哲学、医学の学位を得て医者となる。1766年に解剖学博物館の管理者に任命され、1768年ボローニャ大学の講師、1775年解剖学助教授となり、1782年には科学研究所の産科学教授。1762年の骨の発達についての論文や1775年の鳥の耳の構造についての論文など解剖学において業績をあげたが、その後は生理学、とくに神経と筋肉の研究を行い、1780年代後半には、カエルの足を用いた電気刺激の研究へと進んだ。そのおり、起電機、ライデン瓶から直接に放電を受けないのに、カエルの足にけいれんが生じることを発見した。また雷(大気中の放電)のときにも生じることを実験で確かめた。しかも、鉄の格子に真鍮(しんちゅう)の鉤(かぎ)でカエルの足をつるしておくと、晴れた日でもけいれんが生じることに気づいた。これを研究し、神経や筋肉中に動物特有の電気が存すると解し、ライデン瓶のように筋肉中にたまった電気が金属で回路がつくられたとき放電したと説明する。1791年に『筋肉運動における電気の作用に関する覚書』として出版した。この解釈については、ボルタが2種の金属の接触による電流の発生であると批判し、1790年代に論争が行われたが、1800年にボルタが電池を発明して決着をつけた。動物電気の考えは1840年代にデュ・ボア・レイモンによって発展させられた。
[高田紀代志 2018年7月20日]
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イタリアの解剖学・生理学者。ボローニャ大学の解剖学教授。初期には鳥の腎臓や耳の解剖学的研究があるが,一般的には電気生理学の創始者として知られている。動物電気の存在は発電魚等を通じて古代より知られていたし,すでにフランスの物理学者ノレJean Antoine Nollet(1700-70)らによって実験的に確証されてもいた。彼の研究の端緒となったのはカエルの神経-筋標本が火花放電によって痙攣(けいれん)したという発見である。これらの痙攣の原因を筋肉中の動物電気であるとし,ライデン瓶からの類推によって筋肉の内-外は,陽-陰に荷電しており,中性化の際に筋の痙攣が起こるとした。これらは《筋肉の運動における電気力ノート》(1791)で公表されている。この説に対して賛否両論があったが,A.ボルタから痙攣は金属の接触によるとする強力な反論が提起された。通常ボルタの見解のほうが正しかったとされている。
執筆者:河本 英夫
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イタリアの解剖学者,生理学者.ボローニャ大学を卒業後,1759年薬学と哲学の学位を取得し,ボローニャ大学解剖学講師となる.産科学でも業績を残した.1770年ころからカエルの脚を利用した電気作用実験を行い,galvanism(ガルバニズム)あるいはガルバーニ電気の発見者として知られることになる.当初は,摩擦起電機や雷による空中電気と名づけた静電気作用が,カエルの筋肉運動に及ぼす作用に注目したが,やがて外部からの電気作用がなくても筋肉運動が引き起こされる現象を発見し,動物電気という概念をつくりあげた.かれの妻Luciaも研究に協力したという.かれは“ボローニャ科学アカデミー論集”に“筋肉運動に対する電気の作用についての論文”(全4章)と題して20年間の成果を発表した(1791年).電気発生の原因を動物電気に求めるかれの考えは,直後にA.G.A.A. Volta(ボルタ)によって批判された.1797年ボローニャを支配した親Napoléon政権に,忠誠宣言を行わなかったために失職,翌年死去した.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…生物に見られる発電現象をいう。生体電気という言葉はイタリアの生理学者L.ガルバーニによって最初に用いられた(1786)。彼はカエルの筋肉が2種の金属をつないだもの(電気ピンセット)に触れると収縮が起こることを発見し,その原因は生物電気であると説明した。…
※「ガルバーニ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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