電解製錬(読み)でんかいせいれん(英語表記)electrolytic metallurgy

百科事典マイペディア 「電解製錬」の意味・わかりやすい解説

電解製錬【でんかいせいれん】

電気分解を応用する金属の製錬。代表的なのは,粗銅など乾式製錬で得た粗金属を陽極,目的金属の硫酸塩などの水溶液電解液とし,陰極に目的金属を析出させる電解精製で,これは湿式製錬に属し,銅のほか金,銀,ニッケルなどに広く適用。湿式ではほかに焙焼(ばいしょう)した鉱石溶液からの電解採取があり,亜鉛などに適用。これらでは高純度地金が得られ,粗金属中の金,銀などの副産も可能である。乾式電解製錬では,目的金属の塩を溶融して電解する溶融塩電解が,アルミニウムバイヤー法を代表とし,マグネシウムその他に行われている。
→関連項目製錬電気冶金

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電解製錬」の意味・わかりやすい解説

電解製錬
でんかいせいれん
electrolytic metallurgy

電気分解で金属を採取,精製する製錬法。湿式法と溶融塩法 (溶融塩電解 ) がある。湿式法には不溶陽極式と可溶陽極式があり,前者は採取,後者は精製に応用が多い。
(1) 電解採取 亜鉛,カドミウム,マンガンなどに用いられ,亜鉛が典型例。硫化物原鉱を酸化焙焼して硫酸浸出し,ろ過後浄液処理を施す。浄化液は不溶性鉛陽極,アルミ陰極で電解する。電着亜鉛 (純度 99.7%) は陰極基板からはがして溶解鋳造し,硫酸液は浸出に還流する。
(2) 電解精製 金,銀,銅,ニッケルなどに用いられる。銅を例とすると,転炉で得た粗銅の板を陽極,純銅薄板を陰極として硫酸浴中で電解し,高純度 (99.98%) の陰極銅を得る。
いずれの場合も,工程残滓 (浄液残渣,可溶陽極残屑,陽極沈殿泥) は,金,銀,鉛,カドミウム,セレンなど多種の有価金属を含み,副産物原料とされる。なお,溶融塩法は,陽極水素発生などのため湿式法に適しない卑金属,すなわちアルミニウム,マグネシウム,カルシウム,リチウムなどに適用される電解法で,マグネシウム以下の軽い金属は電析後塩浴面に浮くため,陽極と接触しないよう工夫がなされる。また溶融塩法では,電流は電解と塩浴加熱を兼ねるので電力消費が大きい。

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改訂新版 世界大百科事典 「電解製錬」の意味・わかりやすい解説

電解製錬 (でんかいせいれん)

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世界大百科事典(旧版)内の電解製錬の言及

【製錬】より

…直接還元によるフェロアロイの電気炉による製造や亜鉛の電熱蒸留がこの例である。(8)電解製錬 溶融塩もしくは水溶液という電解質溶液を利用して,イオンとして溶解している金属を電気化学的に還元する方法。金属塩の形で精製した原料を電解質溶液に溶解して金属に還元する電解採取と,一方の電極で粗金属を溶解させ,一方の電極で純金属を製造する電解精製とがある。…

【冶金】より

…19世紀に入るとマグネシウム,アルミニウム,チタンなどの軽金属が登場する。1807年にH.デービーによる溶融塩電解実験で金属カリウムが得られたことに始まる電気冶金(電解製錬技術)の誕生が,この難還元化合物からの金属製錬を可能にしたのである。金属製錬への電気エネルギーの利用は電気化学という新しい学問の発展を促した。…

※「電解製錬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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