出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報
落語家。
[関山和夫]
(1643―1703)もと日蓮(にちれん)宗の僧で、露休(ろきゅう)という僧名を用い、辻(つじ)談義(辻咄(ばなし))を得意とした。寛文(かんぶん)・延宝(えんぽう)・天和(てんな)・貞享(じょうきょう)・元禄(げんろく)(1661~1704)のころ約30年にわたって、京都の祇園真葛ヶ原(ぎおんまぐずがはら)や四条河原(しじょうがわら)、北野天満宮などで辻咄を演じて人気があった。『露がはなし』(1691)、『露新軽口ばなし』(1698)、『露五郎兵衛新ばなし』(1701)、『露休(ろきゅう)ばなし』(1702ころ)、『露休置土産(みやげ)』(1707)などの著書を残し、上方(かみがた)咄の祖といわれる。
[関山和夫]
(1932―2009)本名明田川一郎。1947年(昭和22)2代桂春団治(はるだんじ)に入門。桂春坊、桂小春団治を経て1968年2代露の五郎襲名。怪談や人情咄を得意とした。『なにわ橋づくし』ほか、著作も多数ある。1994年(平成6)~2003年まで上方落語協会会長。2000年紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章。2005年2代目五郎兵衛を襲名。
[関山和夫]
『武藤禎夫・岡雅彦編『噺本大系 第6巻』(1976・東京堂出版)』▽『武藤禎夫編『未刊軽口咄本集』上下(1976・古典文庫)』▽『2代目露の五郎著『なにわ橋づくし』(1988・朝日新聞社)』▽『2代目露の五郎著『上方落語のはなし』(1992・朝日新聞社)』▽『2代目露の五郎著『露の五郎川柳句集』(1997・東方出版)』▽『2代目露の五郎著『五郎は生涯未完成――芸と病気とイエスさま』(2005・マナブックス)』
江戸前期の噺家。前半生の経歴は不明であるが,もと日蓮宗の説教僧であったらしい。僧名は露休。延宝・天和(1673-84)のころから京都の祇園真葛原,四条河原,北野天満宮などで辻咄を演じ,辻談義の名人といわれた。持ち前のすぐれた滑稽の表出力と巧妙な話芸による軽口(かるくち)咄が人気を呼び,上方落語の元祖といわれる。咄本として《露がはなし》(1691),《露新軽口はなし》(1698),《露の五郎兵衛はなし》(1701ごろ),《露休はなし》(元禄末),《露休置土産》(1707)などが知られている。俳人の松尾芭蕉や各務(かがみ)支考がその話芸を高く評価していたことが支考の《本朝文鑑》に見える。そのほか五郎兵衛のことは山東京伝《近世奇跡考》,柳亭種彦《足薪(そくしん)翁記》,喜多村信節《嬉遊笑覧》などにも見えている。軽口咄を興行として成功させ,後世の上方落語隆盛の基を開いた功績は大きい。
執筆者:関山 和夫
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(荻田清)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
…また民間には僧形をした在俗の芸人も現れ,仏教的な咄(はなし)をして喜捨を受けた。元禄(1688‐1704)のころ京都の露の五郎兵衛は僧形で咄をして露休という僧名も用いたが,彼の辻咄は辻談義ともいわれた。寺院での談義は朝,昼,夜におこなわれていたが,しだいに娯楽化して話芸的要素を濃くした。…
…仏教界の辻説法が芸能化したもので,元禄(1688‐1704)のころには辻談義(談義は説法・説教の異称)といっていた。各務(かがみ)支考の《本朝文鑑》辻談義説の条に京都の噺家の露の五郎兵衛について〈世ニ云フ辻噺ノ元祖ナリト〉とある。寺社の縁日,涼み場,夜店など人が大勢来る場所に席を設けて咄をした。…
…その後まもなく,〈はなし〉を〈軽口〉というようになるとともに,はなしのおもしろさを効果的に結ぶ〈落ち〉の技術もみがかれていった(後出〈落ちの型〉を参照)。
[辻咄時代]
落語が飛躍的に進歩したのは,延宝・天和年間(1673‐84)ごろから京都で辻咄(つじばなし)をはじめた露(つゆ)の五郎兵衛と,おなじころ江戸で辻咄をはじめた鹿野(しかの)武左衛門,貞享年間(1684‐88)ごろから大坂で辻咄をはじめた米沢彦八という3人の職業的落語家の功績だった。 辻咄というのは,街の盛場や祭礼の場によしず張りの小屋をもうけ,演者は広床几(ひろしようぎ)の上の机の前で口演し,聴衆は床几に腰をかけて聴くという形式をとり,晴天に興行して道ゆく人の足をとめ,咄が佳境にはいったころを見はからって,銭を集めて回るという庶民的演芸だった。…
※「露の五郎兵衛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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