軽口(読み)カルクチ

デジタル大辞泉 「軽口」の意味・読み・例文・類語

かる‐くち【軽口】

[名・形動]
調子が軽くておもしろい言葉・話。たわいないが、気がきいていて滑稽みのある言葉・話。「軽口をたたく」
軽妙なしゃれ。江戸時代に流行した地口じぐち秀句しゅうくの類。
口が軽くてよくしゃべること。また、そのさまや、そのような人。「軽口を慎む」「軽口な人」
軽口話かるくちばなし」の略。
淡白な味。「軽口の酒」
[類語](1冗談ジョーク洒落駄洒落諧謔/(3口軽い口が軽い饒舌口まめ多弁おしゃべり多言口が滑る口を滑らす口を衝いて出る口から先に生まれる口から出まかせを言う口数が多い・

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精選版 日本国語大辞典 「軽口」の意味・読み・例文・類語

かる‐くち【軽口】

〘名〙
① (形動) 口が軽く、軽率に何でもしゃべってしまうこと。また、そのさま。おしゃべり。
日葡辞書(1603‐04)「Carucuchina(カルクチナ) ヒト
② (形動) 語調が軽快で、滑稽めいて面白みのあること。また、そうしたことばや話。
※評判記・吉原讚嘲記時之大鞁(1667か)ときのたいこ「竹こまのかる口たたけど」
秀句、地口、口合(くちあい)の類。軽妙なしゃれ。軽口咄(かるくちばなし)
※咄本・百物語(1659)上「入口のがくにあげし語、おどけたるかる口なりければ、書とめかへりし」
役者声色身振りをまね、滑稽な話をして人々を笑わせること。また、それを業とする大道芸人。豆蔵。かるくちものまね。〔随筆守貞漫稿(1837‐53)〕
⑤ 淡泊な味。口あたりのよい味。
※咄本・口拍子(1773)かの子餠「買て味わふて見た処が、しごく軽口(カルクチ)さ」

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改訂新版 世界大百科事典 「軽口」の意味・わかりやすい解説

軽口 (かるくち)

俳諧用語。原義は口の軽いさま。転じて秀句地口(じぐち),口合(くちあい)の類をいうようになり,さらに転じて西山宗因や井原西鶴ら談林俳諧の風調を指すに至った。その特質は,即興性,速吟性,放笑性などであり,貞門から軽率・放埒な風体として攻撃を受けた。しかし西鶴らは,これこそ俳諧の原質であると信じて推し進めた結果,ことばの無尽蔵を誇りとする〈矢数(やかず)俳諧〉へと発展した。
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世界大百科事典(旧版)内の軽口の言及

【談林俳諧】より

…談林とはもと僧侶の学寮をいい,初めに江戸の松意(しようい)一派がそれを名のったが,のちに宗因をいただく諸派の俳諧の総称となった。談林はまた,貞門が乗り越えるべく努めた《守武千句(もりたけせんく)》などの猥雑な俳風を復活させたために〈守武流〉,滑稽をこととする軽妙洒脱な詠み口から〈軽口(かるくち)〉,付合(つけあい)の連想飛躍を喜ぶところから〈飛躰(とびてい)〉,旧来の価値観を転倒させた異端性から〈阿蘭陀(オランダ)流〉とも呼ばれた。談林の時代は大体,寛文年間(1661‐73)の台頭期,延宝年間(1673‐81)の最盛期,天和年間(1681‐84)の衰退期の3期に分けられる。…

【俄】より

…幕末には大坂に俄席と呼ばれる専門劇場もできた。 大阪俄は景物を見立てておとす〈見立俄〉(配り物俄),地口の面白さをねらう〈もじり俄〉(口合俄),歌舞伎種の〈物まね俄〉,行違いの面白さをねらった〈拍子違い俄〉,スカタン(出まかせ,脱線)の〈出たらめ俄〉に大別され,これを一人でコント風に演じる〈一口俄〉,2人以上で落語の仕方噺風に演じる〈軽口〉や〈俄芝居〉のいずれかで演じる。俄芝居では舞台を本舞台を思わせるように飾り,衣装も本衣装を用いたが,鬘(かつら)はボテ鬘を使い,たとえ女方でも化粧をしないのがしきたりである。…

【落語】より

…演出法は,落語家が扇子と手ぬぐいを小道具に使用し,講談や浪曲(浪花節)のような叙述のことばを省略して,会話と動作によってはなしを展開する。はじめは,単に〈はなし〉といわれ,この言いかたは,現在も〈はなしを聴きに行く〉とか,〈はなし家〉とかいうように残っているが,天和・貞享(1681‐88)以後は,上方を中心に,〈軽口(かるくち)〉〈軽口ばなし〉などと呼ばれ,この上方的呼称である〈軽口〉時代が,上方文学の衰退期である明和・安永(1764‐81)ごろで終わり,文学の中心が主として江戸に移って,江戸小咄時代になると,もっぱら〈落(おと)し咄〉というようになった。〈落語〉という字が使用されはじめたのは,天明(1781‐89)からだが,〈らくご〉とは読まず,〈おとしばなし〉と呼んでいた。…

※「軽口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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