刑事訴訟の判決が確定した後,その事件の審判が法令に違反していたことが判明したときに,その是正のために行われる申立てのこと。確定判決を対象とする点で,上訴の一種たる上告とは異なり,再審と並ぶ非常救済手続の一種とされる。沿革的には,フランス法における,法律の利益のための破棄申立ての制度が,日本法に採り入れられたものであり,法令解釈の統一を図ることを主たる目的とする。非常上告の申立権者は,検事総長のみであり,つねに,最高裁判所に申し立てなければならない(刑事訴訟法454条)。略式命令(〈略式手続〉の項参照)も確定すれば判決と同じ効力を持つので,非常上告の対象となりうる。申立書には,申立ての理由を記載しなければならない(455条)。理由は,原判決またはその手続に法令違反があったことに限られ,事実誤認は理由とならない。最高裁判所は,申立書に記載された事項のみを調査して,もし原判決に法令違反があると認められれば,判決でその違反した部分を破棄し,原判決に至る訴訟手続に違法があれば,その手続を破棄する。これらの破棄は,原則として単なる宣言的なもので,被告人に効力を及ぼさない。ただし,原判決の法令違反が被告人の不利益となっている場合(例えば,法定刑より重い刑を言い渡したとき)には,破棄のうえで,改めて被告事件について判決するので,その限りでは,被告人にも実際の効力が及ぶ(458条,459条)。
執筆者:後藤 昭
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刑事訴訟法上、法令違反を理由として、確定判決またはその訴訟手続の破棄を申し立てることをいう。申立権者は検事総長に限られる。判決が確定したのちその事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる(454条)。法令の解釈の統一を主眼とするので、非常上告に対する判決は原則として、その効力を被告人に及ぼさないが、原判決が法令に違反したときで、原判決が被告人のため不利益であるときには、これを破棄して、被告事件についてさらに判決をするので、その効力は被告人にも及ぶ(458条1号但書、459条)。
[内田一郎]
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