非常上告(読み)ヒジョウジョウコク

デジタル大辞泉 「非常上告」の意味・読み・例文・類語

ひじょう‐じょうこく〔ヒジヤウジヤウコク〕【非常上告】

刑事訴訟で、判決が確定したのち、その事件審判法令に違反したことを理由として、検事総長最高裁判所に対して申し立てる手続き。

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精選版 日本国語大辞典 「非常上告」の意味・読み・例文・類語

ひじょう‐じょうこくヒジャウジャウコク【非常上告】

  1. 〘 名詞 〙 刑事訴訟で、判決が確定した後、事件の審判が法令に違反したことを理由として検事総長が最高裁判所に対して申し立てる特別の救済手続。判決や訴訟手続の違法部分を正すことだけを目的とするものであるから、被告人からは申し立てることができず、また違法部分が破棄されても、被告人に不利益な効力を及ぼさない。

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改訂新版 世界大百科事典 「非常上告」の意味・わかりやすい解説

非常上告 (ひじょうじょうこく)

刑事訴訟の判決が確定した後,その事件の審判が法令に違反していたことが判明したときに,その是正のために行われる申立てのこと。確定判決を対象とする点で,上訴一種たる上告とは異なり,再審と並ぶ非常救済手続の一種とされる。沿革的には,フランス法における,法律の利益のための破棄申立ての制度が,日本法に採り入れられたものであり,法令解釈統一を図ることを主たる目的とする。非常上告の申立権者は,検事総長のみであり,つねに,最高裁判所に申し立てなければならない(刑事訴訟法454条)。略式命令(〈略式手続〉の項参照)も確定すれば判決と同じ効力を持つので,非常上告の対象となりうる。申立書には,申立ての理由を記載しなければならない(455条)。理由は,原判決またはその手続に法令違反があったことに限られ,事実誤認は理由とならない。最高裁判所は,申立書に記載された事項のみを調査して,もし原判決に法令違反があると認められれば,判決でその違反した部分を破棄し,原判決に至る訴訟手続に違法があれば,その手続を破棄する。これらの破棄は,原則として単なる宣言的なもので,被告人に効力を及ぼさない。ただし,原判決の法令違反が被告人の不利益となっている場合(例えば,法定刑より重い刑を言い渡したとき)には,破棄のうえで,改めて被告事件について判決するので,その限りでは,被告人にも実際の効力が及ぶ(458条,459条)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「非常上告」の意味・わかりやすい解説

非常上告
ひじょうじょうこく

刑事訴訟法上、法令違反を理由として、確定判決またはその訴訟手続の破棄を申し立てることをいう。申立権者は検事総長に限られる。判決が確定したのちその事件の審判が法令に違反したことを発見したときは、最高裁判所に非常上告をすることができる(454条)。法令の解釈の統一を主眼とするので、非常上告に対する判決は原則として、その効力を被告人に及ぼさないが、原判決が法令に違反したときで、原判決が被告人のため不利益であるときには、これを破棄して、被告事件についてさらに判決をするので、その効力は被告人にも及ぶ(458条1号但書、459条)。

[内田一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「非常上告」の意味・わかりやすい解説

非常上告
ひじょうじょうこく

すでに確定した刑事事件の判決について,その事件の審判が法令に違反していたことが判明した場合に認められる是正のための手続 (刑事訴訟法 454~460) 。上告が未確定の判決に対する不服申立ての手段であるのに対し,非常上告は判決確定後の救済手段である。その申立ては,検事総長から最高裁判所に対して行われる。再審とは異なり,被告人であった者には申立権はなく,また事実認定の誤りは申立ての理由とならない。非常上告の判決は,原判決が法令に違反し,被告人のために不利益であるために破棄された場合を除いて,被告人に効力を及ぼさない (459条) 。したがって,この制度の目的は,誤判の救済よりも法令の解釈の統一をはかることにあると説く学説が多い。

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百科事典マイペディア 「非常上告」の意味・わかりやすい解説

非常上告【ひじょうじょうこく】

刑事訴訟法上,判決が確定した後に,事件の審判の法令違反を理由として許される非常救済手続(刑事訴訟法454条以下)。法令解釈の統一を目的とし,検事総長が最高裁判所に違反部分の破棄を求めるもの。
→関連項目上告

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