改訂新版 世界大百科事典 「音楽の捧げもの」の意味・わかりやすい解説
音楽の捧げもの (おんがくのささげもの)
Musikalisches Opfer
J.S.バッハの作品(BWV1079)。3声と6声のリチェルカーレ各1曲,フルート,バイオリン,通奏低音のためのトリオ・ソナタ1曲,2~4声の種々のカノン10曲から成り,《フーガの技法》(1745ころ-50。BWV1080)と並んで対位法技術の最高峰を示している。全13曲は同じ主題とその変形に基づいているが,この印象的な主題は1747年5月,バッハがポツダムを訪れたおりにプロイセン国王フリードリヒ2世(大王)が与えたもので(〈王の主題〉),そのときバッハは3声のリチェルカーレを即興演奏したと伝えられる。残りの部分はライプチヒに帰ってから作曲・印刷し,同年7月7日付けでフリードリヒ2世に献呈した。トリオ・ソナタと1曲のカノン以外は楽器編成の指定がないが,二つのリチェルカーレは記譜法から判断してチェンバロ用と考えられている。
執筆者:角倉 一朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報