改訂新版 世界大百科事典 「頸管裂傷」の意味・わかりやすい解説
頸管裂傷 (けいかんれっしょう)
cervical laceration
子宮頸部の裂傷をいい,主として分娩時に産道の一部を形成する頸管が開大するさいに生ずるものであるが,人工妊娠中絶手術で行われる頸管拡張術などの手術操作によるものもある。分娩時に起こるものの原因には,過強陣痛による墜落分娩,鉗子分娩,骨盤位分娩などのように頸管の急激な開大によるもの,反屈位など胎児の異常回旋や巨大児の場合のように頸管が過大に拡張されることによるもの,高年初産婦にみられるような頸管の伸展性が不良であるためのものなどがある。発生すると,とくに分娩時のものは大出血を招き,致命的となることもまれでない。裂傷部は縫合により止血し,治癒するが,無症状または出血が少ないため放置されたり,あるいは縫合しても感染を併発して縫合不全を起こしたものでは,開いたまま瘢痕(はんこん)化した頸管裂傷すなわち陳旧性頸管裂傷や頸管腟瘻(ろう)をのこし,頸管炎,不妊,流産の原因となることがある。ときに形成手術が必要となる。
→異常分娩 →出産
執筆者:泉 陸一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報