家庭医学館 「食生活と健康」の解説
しょくせいかつとけんこう【食生活と健康】
現在の日本では、食べすぎと運動不足が主因の肥満、糖尿病、高脂血症(こうしけっしょう)、高血圧、痛風(つうふう)などの生活習慣病(せいかつしゅうかんびょう)の増加が問題になっています。
また、国民栄養調査によると、「カルシウムのとり方が少ない」「動物性脂肪の摂取率が高い」という問題点が指摘されています。
たんぱく質と脂肪に植物性が多い和食が、欧米では、健康食として注目を集めています。日本でも、自国の健康食を見直すべきでしょう。
健康づくりの基礎は、栄養、運動、休養の3つで、このうち栄養は、多様な食品摂取(1日30品目が目標)で栄養バランスをとり、日常生活の活動に見合ったエネルギーを摂取して、カロリーをとりすぎないようにすることがたいせつです。
●発がん性のある食品
食品のなかには、発がん物質を含むものがあります(ワラビのプタキロサイド、食品のカビのアフラトキシン類、焼き魚のこげのヘテロサイクリックアミンIQなど)。調理や加工の過程で発生するもの(ベンツピレンなど)や食品中の成分が反応して発生するもの(ニトロソ化合物など)もあります。
一方、がんの発生を抑制する成分を含む食品もいろいろあります。とくに緑黄色野菜(りょくおうしょくやさい)や果物に含まれるβ(ベータ)カロテンやこんにゃくなどに含まれる食物繊維にその効果があるとされています。
がんの予防には、緑黄色野菜や果物を含め、数多くの食品をまんべんなく摂取することが効果的といわれます。
国立がんセンターでは、「がんを防ぐための12か条」を提唱しています。これは、①偏りのない栄養、②毎日、変化のある食生活、③食べすぎを避け、脂肪をひかえめに、④お酒は、ひかえめに、⑤たばこは、ひかえめに、あるいは、新しく吸い始めない、⑥緑黄色野菜をたっぷりとる、⑦塩辛いものを少なめに、熱いものは冷ましてから、⑧こげた部分は、避けて食べる、⑨カビの生えたものに注意、⑩日光にあたりすぎない、⑪適度な運動、⑫からだを清潔に、の12項目で、これらを積極的に実行すれば、がんの約60%(禁煙で30%、食生活の工夫などでさらに30%)は防げるとしています。
●食品添加物と健康
食品添加物の使用には、厳しい規制が設けられていますが、今後、新たな問題がおこってくる可能性があります。最近は、化学合成添加物への不安から天然添加物も使用されるようになりましたが、将来、安全基準の設定が必要になると考えられています。
●健康食品と健康
健康食品が、かえって健康被害を招くこともあります。クロレラ含有の食品の過剰摂取が原因の光線過敏症(こうせんかびんしょう)などがそのよい例です。
●特殊栄養食品と健康
ビタミンなどの微量栄養素を添加した強化食品、病人・妊産婦・乳児向けの特別用途食品、生体リズムや吸収機能の調節・アレルギーの軽減・老化や病気の防止などの機能をもたせた特定保健用食品(とくていほけんようしょくひん)(機能性食品(きのうせいしょくひん))などの特殊栄養食品が市販されています。
これらは、必要に応じて利用するといいでしょう。
●遺伝子組み換え食品と健康
近年、遺伝子を農作物に組み込み、特定の除草剤に耐性をもたせたダイズやナタネ、害虫に強いジャガイモやトウモロコシなどの研究、開発が各国で進んでいます。すでに、アメリカでは商品化され販売され、日本でも加工食品の原料として使用されています。
遺伝子組み換え食品によって、食糧増産や、除草剤の散布量を減らすなど地球環境の保全が期待されています。
厚労省では、これらの農産物に対し、安全性評価指針を作成し、安全確保をはかっています。
しかし、遺伝子組み換えで組み込まれた遺伝子がアレルギー、発がん性、慢性毒性などを発揮する可能性もありますが、まだ、調べられていません。
また、除草剤耐性の遺伝子が植物や昆虫に変化をおこし、生態系に影響を与える可能性がありますが、これらも十分に調べられていません。