食品に色をつけるために用いられる色素。タール系色素のように化学的に合成された人工着色料と天然色素に分けられる。食品の見た目の美しさは,食欲に大きく影響する。また,昔は食品加工技術がまずく,加工処理により色が悪くなることが多かった。そこで,食品を着色することが古くから行われている。しかし,食品産業において最初に使われた硫酸バリウム,硫化カドミウム,酸化スズなどの無機質顔料はいずれも有害な金属を含んでおり,相次いで禁止処置がとられた。日本でも1900年に有害性着色料取締規則が公布され,禁止となった。第1次世界大戦前になると,ドイツで石炭を原料として各種の色素が合成され,食品の着色にも利用されるようになった。これらはコールタールを原料とすることから,タール系色素と呼ばれる。その色彩の鮮やかさと色伸びのよさから,広く使われるようになった。しかし,タール系色素は化学構造的にはアゾ色素,キサンテン色素などであり,これらの構造をもつ化合物は毒性をもつことが多い。そこで,タール系色素については動物を用いた試験が実施され,毒性の認められたものは使用禁止処置がとられている。日本でも最大時には20数種が使われていたが,1997年現在11種となっている(表)。しかし,国により食生活が異なるのでタール系色素の許可状況は異なり,加工食品を輸出入するときは注意が必要である。さらに,日本では人工着色料を使用した場合は,その旨を食品の外装に表示する義務があり,それを避けるために天然物から抽出した色素が広く使われるようになった。1982年では33種の天然色素が使用されている。
日本で許可されているタール系色素はアゾ色素に属する赤色2号,赤色40号,赤色102号,黄色4号,黄色5号,キサンテン色素に属する赤色3号,赤色104号,赤色105号,赤色106号,トリフェニルメタン色素に属する青色1号,緑色3号,インジゴイド色素に属する青色2号である。いずれも水によく溶ける。油脂性食品に用いるときは,プロピレングリコールに溶解する。また,色素をアルミニウム塩としたアルミニウムレーキは水に不溶となるが,もとの色素より日光や熱に対し安定性が増すので,粉末食品や食品包装材の着色に用いられる。
植物の花の色がひじょうに鮮やかであるように,天然にも色素は豊富に存在する。日本では天然物は使用の表示がいらないことから,現在,多くの天然色素が使われている。天然色素は,原料から植物性,動物性,微生物,鉱物性に分かれる。植物性のものには,ブドウ,カカオ,ベニノキ,クチナシ,ベリー類,コーリャン,トマトなどの果実に由来するもの,ハイビスカス,ベニバナなど花に由来するもの,アカネ,ウコン,ニンジンなど根に由来するもの,シソなど葉に由来するものがある。動物性のものには,ラック,コチニールがある。微生物に由来するものには,モナスクス,クロレラ,リボフラビンがある。鉱物性のものには,べんがら,カーボンブラック,油煙ススがある。このほか,糖を加熱して製造するカラメルも広く使われている。以下おもなものについて述べる。
(1)アナトー ベニノキの種子からとれる赤色色素の通称名。本体はノルビキシンnorbixinである。古くからチーズの着色に使われている。最近はウィンナーソーセージによく用いられる。(2)ウコン ショウガ科の植物の根に含まれる黄色色素の通称名で,本体はターメリックturmericである。カレー粉,たくあん漬の着色に用いられている。(3)コチニール 砂漠のサボテンに着生するコチニールカイガラムシの体内に蓄積している赤色色素の通称名で,本体はカルミン酸である。赤色のタール系色素の代替として用いられる。(4)モナスクス 紅こうじ菌の生産する赤色色素の通称名で,紅酒の製造に用いられる。最近は,大量培養法で生産している。耐熱性,染色性がよいので,ハム,水産練製品などに広く使われている。
なお,日本では天然着色料を用いて,生鮮食料品を着色することは,消費者をまどわすものとして禁止されている。このほかに,酸化鉄(Ⅲ)(べんがら),天然色素のβ-カロチンと水溶性アナトー,葉緑素を加工した鉄および銅クロロフィリンナトリウムなどが食品着色料として許可されている。ただし,べんがらはバナナとこんにゃく,銅クロロフィリンナトリウムはチューインガム,コンブなど特定の食品についてのみ使用が許可される。
執筆者:田島 真
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食品の着色に利用される色素で、化学合成および天然色素が用いられている。
化学合成色素には毒性をもつものもあり、規制の強化によりその品目は著しく削減された。一方、自然指向と相まって天然色素への関心が高まり、品質の向上および安定化技術の進歩がみられているが、合成色素に比べて安全・安定性に関するデータの蓄積が十分とはいえない点のほか、天然物であるがゆえに、産地や製法による成分組成や含量が異なること、複数の成分組成や色素含量の分析法が確立されていないものがあることなど、残されている問題点もある。
[飛田満彦]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
[1973~ ]プロ野球選手。愛知の生まれ。本名、鈴木一朗。平成3年(1991)オリックスに入団。平成6年(1994)、当時のプロ野球新記録となる1シーズン210安打を放ち首位打者となる。平成13年(...
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