日本大百科全書(ニッポニカ) 「食品着色料」の意味・わかりやすい解説
食品着色料
しょくひんちゃくしょくりょう
食品の製造、加工、調理の際に、食品に色をつける目的で加える物質をいう。食品添加物の着色料には天然着色料と合成着色料がある。広範囲に使用されているのはタール系の合成着色料であるが、近年は天然着色料の使用も増えてきている。
[河野友美・山口米子]
天然着色料
植物そのものから溶け出す色素、あるいは植物または動物体などの天然物から抽出した色素のうち、食品の着色に使用されるものをいう。おもなものとして、植物ではウコン色素(黄色)、クチナシ色素(青色、赤色、黄色)、ベニバナ色素(黄色)、パプリカ色素(黄赤色)、赤キャベツ色素(赤色)など、動物から抽出したものではコチニール色素やラック色素(赤色)、イカ墨(黒色)などがある。コチニールやラックはカイガラムシ科の昆虫からとったもので、古くから食紅や口紅の原料とされてきた。そのほか、鉱物では炭末(黒色)などがある。
[河野友美・山口米子]
合成着色料
食品添加物に指定されたもの以外は使用できない。現在(2006)許可されているのは、タール系色素では赤色7種、黄色2種、緑色1種、青色2種、それに食用色素アルミニウムレーキ(レーキとはアルミニウムなどの金属にタール色素を吸着させたもの。水にはほとんど溶けない)である。タール系色素のほか、天然に存在するものを化学合成したもの、あるいは化学処理を施したものも食品衛生法による食品添加物となり、それらに属するものとして三二酸化鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、銅クロロフィリンナトリウム、水溶性アナトー(ノルビキシンカリウム、ノルビキシンナトリウム)、β-カロチンなどがある。
[河野友美・山口米子]
安全性
タール系の色素は第二次世界大戦後22種あったが、発癌(はつがん)性、毒性など問題のあるものが次々禁止され、現在(2006)は12種と、そのアルミニウムレーキが残っている。しかしまだ健康上疑わしいものもあり、安全性の面からさらに検討が加えられることも考えられる。天然着色料については、従来は表示する必要がなかったが、1991年(平成3)より表示が義務づけられ、95年には100種近いものが既存添加物として公式に使用が認められた。しかし、これらの安全性について科学的な試験はすべてについて行われていないので、発癌性、毒性などの危険がまったくないとはいいきれない。なお合成着色料、天然着色料ともに、野菜、食肉、鮮魚貝類、昆布類、茶、ワカメ類、のり類、豆類への使用が禁止されている。
[河野友美・山口米子]
『藤井正美監修、清水孝重・中村幹雄著『新版・食用天然色素』(2001・光琳)』▽『片山脩・田島真著『食品と色』(2003・光琳)』