日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニノキ」の意味・わかりやすい解説
ベニノキ
べにのき / 紅木
[学] Bixa orellana L.
ベニノキ科(APG分類:ベニノキ科)の半落葉小木。ブラジル原産で、今日では世界中の熱帯各地で染料作物として栽培される。高さ約3メートル。葉は先のとがった心臓形で長さ約10センチメートル、長い葉柄で枝に互生する。花は淡紅色または白色で長さ6センチメートル、5枚の花弁がある。果実はやや扁平(へんぺい)な三角形、長さ4センチメートルほどで赤褐色に熟し、柔らかい刺(とげ)が密生する。縦に二つに裂けて、赤色の仮種皮に包まれた種子が20~30個露出する。仮種皮にはアルカロイド性の紅色色素であるビクシンbixinを含む。この色素は西インド諸島の原住民が体に塗って戦いや舞踏の装いとしたといわれ、メキシコでは古くからチョコレートの着色に用いた。染料としては酸やアルカリに強いが、日光に当たると退色しやすい。化学染料の発明により需要は減ったが、無毒なため、いまもヨーロッパではバターやチーズなどの食品や膏薬(こうやく)の染色に用いられる。繁殖は実生(みしょう)または挿木による。熱帯では観賞用として生け垣などにも栽培され、最近では果実のついた枝がいけ花用に輸入され、市販されている。
[星川清親 2020年10月16日]