ベニノキ(その他表記)annatto
Bixa orellana L.

改訂新版 世界大百科事典 「ベニノキ」の意味・わかりやすい解説

ベニノキ (紅木)
annatto
Bixa orellana L.

ベニノキ科の常緑または半常緑の低木~小高木で,高さ3~8mになる。熱帯アメリカ原産であるが,染料植物として世界の熱帯から亜熱帯に広まった。互生する葉は卵形で長さ8~24cm,幅4~16cm,葉柄の長さ5~12cm。花は淡紅色白色,径4~6cmで,萼片4~5枚,花弁4~7枚,おしべ多数。8~50花が枝端に円錐花序をつくる。果実は長さ2~4cmのやや扁平な卵形の蒴果(さくか)で,外側に赤褐色の粗毛を開出,密生する。熟すと2縦裂し,黄紅色,粘液質の種皮で包まれた20~30個の種子を現す。種皮から橙色の染料ビクシンbixinが得られ,アメリカ・インディアンは身体を彩色するのに用いた。また木綿や絹の染料として重用されたが,退色しやすく,1884年にアニリン染料コンゴーレッドが合成されて以来用いられなくなった。しかし無毒なので,ヨーロッパではアナットーannattoの名でバター,チーズなどの食品染料として今日も使用されている。

 ベニノキ科はベニノキ1種だけからなり,スミレ目に入れられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベニノキ」の意味・わかりやすい解説

ベニノキ
べにのき / 紅木
[学] Bixa orellana L.

ベニノキ科(APG分類:ベニノキ科)の半落葉小木。ブラジル原産で、今日では世界中の熱帯各地で染料作物として栽培される。高さ約3メートル。葉は先のとがった心臓形で長さ約10センチメートル、長い葉柄で枝に互生する。花は淡紅色または白色で長さ6センチメートル、5枚の花弁がある。果実はやや扁平(へんぺい)な三角形、長さ4センチメートルほどで赤褐色に熟し、柔らかい刺(とげ)が密生する。縦に二つに裂けて、赤色仮種皮に包まれた種子が20~30個露出する。仮種皮にはアルカロイド性の紅色色素であるビクシンbixinを含む。この色素は西インド諸島の原住民が体に塗って戦いや舞踏の装いとしたといわれ、メキシコでは古くからチョコレートの着色に用いた。染料としては酸やアルカリに強いが、日光に当たると退色しやすい。化学染料の発明により需要は減ったが、無毒なため、いまもヨーロッパではバターやチーズなどの食品や膏薬(こうやく)の染色に用いられる。繁殖は実生(みしょう)または挿木による。熱帯では観賞用として生け垣などにも栽培され、最近では果実のついた枝がいけ花用に輸入され、市販されている。

[星川清親 2020年10月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ベニノキ」の意味・わかりやすい解説

ベニノキ(紅の木)
ベニノキ
Bixa orellana; annatto

ベニノキ科の常緑小高木。西インド原産であるが,染料を採取するため,熱帯地方で栽培される。高さ数mになり,樹皮は赤褐色。葉は長さ 10~15cmの広卵形で互生し,長い柄をもつ。頂生の円錐花序をなして,径5~6cmの5弁の花を数花ずつつける。花弁は淡紅色で美しく,多数のおしべがある。果実は紅色素ビキシンを含み,絹糸,羊毛,バター,チーズ,チョコレートなどの染色・着色に用いられ,またエクアドルなどでは先住民がこの色素で頭髪の染色をする習慣がある。

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