駅戸(読み)エキコ

デジタル大辞泉 「駅戸」の意味・読み・例文・類語

えき‐こ【駅戸】

律令制で、諸国宿駅に所属していた家。一定戸数が指定され、駅馬飼育駅田耕作などを受け持った。うまやべ。

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精選版 日本国語大辞典 「駅戸」の意味・読み・例文・類語

えき‐こ【駅戸】

  1. 〘 名詞 〙 古代、諸国の宿駅に所属した戸。駅子(えきし)を出し、駅馬の飼育、馬具整備、駅田の耕作などに従う。徭役(ようえき)は免じられた。うまやべ。
    1. [初出の実例]「凡駅各置長一人。取駅戸内家口富幹事者之」(出典令義解(718)厩牧)

うまや‐べ【駅戸】

  1. 〘 名詞 〙 令制下、諸国の宿駅に属した戸。えきこ。

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改訂新版 世界大百科事典 「駅戸」の意味・わかりやすい解説

駅戸 (えきこ)

日本古代の駅伝制で,駅の諸業務に従事した戸。駅家(うまや)のある村落から駅馬の数に対応して指定されたので,山陽道や東海・東山両道のように1駅あたりの駅馬の多い地方では,しばしば駅戸だけで50戸1郷の行政村落を構成したらしく,〈駅家郷〉とよばれた郷が少なくない。駅戸は,中流以上の戸ならば1戸につき1匹ずつ駅馬を飼い,貧富を問わず成年男子は駅子(えきし)という馬丁として駅馬に乗る官人を次の駅まで送迎し,駅田(えきでん)を無償で耕作し,駅稲(えきとう)を春に貸し付けられて秋には5割に及ぶ利稲とともに駅に納めるなどの義務を負っているので,庸(よう)と雑徭(ぞうよう)が免除される。駅長は豊かな駅戸のうちで管理能力のある者が任命され,調・庸・雑徭が免除されるが,不注意で駅馬や馬具が欠損すると弁償の責任を負わされる。このような駅戸は駅馬の利用制限がゆるみ,また規定以上の匹数を要求する官人がふえるにつれて負担過重となり,やがて駅制崩壊の主因となった。
駅伝制
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「駅戸」の意味・わかりやすい解説

駅戸
えきこ

令制で,駅に数戸ずつが指定され,駅の労働力としての駅子を供給するほか,駅馬を飼い,駅田の耕作などに従事した家。徭役 (ようえき) は免除された。 (→駅家〈うまや〉 )  

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普及版 字通 「駅戸」の読み・字形・画数・意味

【駅戸】えきこ

はたご

字通「駅」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の駅戸の言及

【駅家】より

…文献によれば,築地にかこまれた駅院が駅馬の通る路に面して駅門をひらき,院内には駅馬の厩舎や水飲場をはじめ,駅長らのいる事務室,駅馬を使う官人やその馬丁を勤める駅子(えきし)の休息・飲食・宿泊のための建物,馬具・蒭(まぐさ)・駅稲(えきとう)・酒・塩などを納める倉庫などのあったことが想定できるが,それらは村落の有力者である駅長の私宅部分と区別しがたく,考古学的には駅家の遺跡がまだ明白でない。また駅家は都や国府から次の国府までの駅路という交通の要路にそい,原則として30里(約16km)ごとに設置され,その周囲には駅の諸業務に従事する駅戸を出す村落が必要なので,郡家と同じ地区にあるばあいも少なくない。なお駅家は兵部省の管轄下にあり,10世紀初頭の《延喜式》には全国で402の駅名があげられている。…

【駅伝制】より

…大化改新後,7世紀後半の律令国家形成期には,駅鈴によって駅馬を利用しうる道を北九州との間だけでなく東国へも延ばしはじめたようであるが,8世紀初頭の大宝令では唐を模範とした駅制を全国に拡大することとした。すなわち朝廷は特別会計の駅起稲(えききとう)・駅起田(えききでん)(後の養老令では駅稲・駅田)を各国に設置させ,これを財源として畿内の都から放射状に各国の国府を連絡する東海・東山・北陸・山陰・山陽・南海・西海の7道をそのまま駅路とし,駅路には原則として30里(約16km)ごとに駅を置かせ,駅ごとに常備すべき駅馬は大路の山陽道で20匹,中路の東海・東山両道で10匹,他の4道の小路では5匹ずつとし,駅の周囲には駅長や駅丁を出す駅戸を指定して駅馬を飼わせ,駅家(うまや)には人馬の食料や休憩・宿泊の施設を整え,駅鈴を貸与されて出張する官人や公文書を伝送する駅使が駅家に到着すれば,乗りつぎの駅馬や案内の駅子を提供させることとした。その結果,もっとも速い飛駅(ひえき∥ひやく)という駅使は,大宰府から4~5日,蝦夷に備えた陸奥の多賀城からでも7~8日で都に到着することができた。…

※「駅戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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