列車の運転に関する業務(列車の待合せ、行違い、組成、入換え)と、旅客、荷物、貨物の取扱い業務とを行う駅の最高責任者。また、駅だけでなく、列車の組成や入換えに専念する操車場、あるいは列車の待合せや行違いの運転業務のみを行う信号場の長を総称して駅長ともいう。業務量に応じ1人の駅長が複数以上の駅または操車場、信号場の長を兼轄することもある。旧国鉄の駅長は「日本国有鉄道組織規程」により、鉄道管理局長(四国は総局長)の指揮下にあってその業務を遂行するため、助役、庶務係、運転主任、輸送管理係、営業係、輸送係、運転係など、駅の規模と営業範囲(旅客、荷物、貨物)に応じた部下を置き、在任中は駅近くの宿舎居住が義務づけられていた。制服も「服制及び被服類取扱基準規程」に定められたものを着用し、ことに制帽には縞(しま)織金線二条付きの緋(ひ)色の蛇腹(じゃばら)が巻かれて、ほかの駅員と識別しやすくなっていた。一方、そのほかの鉄道事業者においては、「地方鉄道係員職制」(大正8年閣令第13号)により運輸長の指揮を受け、助役、出札掛、改札掛、貨物掛、小荷物掛、操車掛、転轍(てんてつ)手などの部下を原則として置くよう定められていた。その後、1987年(昭和62)4月1日の国鉄の分割・民営化に伴う改正鉄道営業法の施行により、それまでの「地方鉄道係員職制」にかわる「鉄道係員職制」(昭和62年運輸省令第13号)がすべての鉄道事業者に適用されるようになったため、駅長は「運輸長の命を受け、駅務を統括し、構内の秩序を保持し、その所属係員を監督する」と規定されるようになり、部下として営業係、構内係、踏切保安係を置くものとされた。細部の服務規程は各社によって異なっている。
[佐藤豊彦・齊藤基雄]
『檀上完爾著『駅長の帽子』(2001・心交社)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…駅家の家は,郡司の住む郡家(ぐうけ)の家と同じく,私宅を兼ねた役場の意。文献によれば,築地にかこまれた駅院が駅馬の通る路に面して駅門をひらき,院内には駅馬の厩舎や水飲場をはじめ,駅長らのいる事務室,駅馬を使う官人やその馬丁を勤める駅子(えきし)の休息・飲食・宿泊のための建物,馬具・蒭(まぐさ)・駅稲(えきとう)・酒・塩などを納める倉庫などのあったことが想定できるが,それらは村落の有力者である駅長の私宅部分と区別しがたく,考古学的には駅家の遺跡がまだ明白でない。また駅家は都や国府から次の国府までの駅路という交通の要路にそい,原則として30里(約16km)ごとに設置され,その周囲には駅の諸業務に従事する駅戸を出す村落が必要なので,郡家と同じ地区にあるばあいも少なくない。…
…駅戸は,中流以上の戸ならば1戸につき1匹ずつ駅馬を飼い,貧富を問わず成年男子は駅子(えきし)という馬丁として駅馬に乗る官人を次の駅まで送迎し,駅田(えきでん)を無償で耕作し,駅稲(えきとう)を春に貸し付けられて秋には5割に及ぶ利稲とともに駅に納めるなどの義務を負っているので,庸(よう)と雑徭(ぞうよう)が免除される。駅長は豊かな駅戸のうちで管理能力のある者が任命され,調・庸・雑徭が免除されるが,不注意で駅馬や馬具が欠損すると弁償の責任を負わされる。このような駅戸は駅馬の利用制限がゆるみ,また規定以上の匹数を要求する官人がふえるにつれて負担過重となり,やがて駅制崩壊の主因となった。…
…日本古代の駅伝制で駅に配置した馬。公務出張の官人や公文書伝送の駅使が前の駅から駅馬に乗り駅子に案内されて駅家(うまや)へ到着すると,駅長は前の駅の駅馬をその駅子に送り返させ,当駅の駅馬に駅子を添えて次の駅まで送らせる。貸与する駅馬数は利用者が六~八位なら3匹,初位以下なら2匹というように,位階によって定まっているが,案内する駅子は1人だったらしい。…
※「駅長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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