突発性難聴(読み)トッパツセイナンチョウ

精選版 日本国語大辞典 「突発性難聴」の意味・読み・例文・類語

とっぱつせい‐なんちょう‥ナンチャウ【突発性難聴】

  1. 〘 名詞 〙 高度の難聴、耳鳴り、耳閉塞感などの症状が突然、多くは片側の耳に生ずる原因不明の疾患。
    1. [初出の実例]「目は視野狭窄〈略〉耳は突発性難聴」(出典:吉里吉里人(1981)〈井上ひさし〉二七)

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家庭医学館 「突発性難聴」の解説

とっぱつせいなんちょう【突発性難聴】

[どんな病気か]
 何のきっかけもなしに、突然、聞こえが悪くなる病気で、ふつう、片側におこります。
 起床時に気づくことが多く、難聴、耳閉感(じへいかん)(耳のつまった感じ)、耳鳴(みみな)りが主症状ですが、約3分の1はめまいをともない、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)がおこる場合もあります。
 40~50歳代での発症が多いのですが、若い人の発症もあります。
[原因]
 内耳(ないじ)が障害され、内耳循環障害(ないじじゅんかんしょうがい)、内耳血管(ないじけっかん)れん縮(しゅく)、ウイルス感染などが原因として推定されていますが、確かなことはまだ不明です。
[検査と診断]
 純音聴力検査(じゅんおんちょうりょくけんさ)を行なうと、軽度から聾(ろう)までのいろいろな程度の難聴がみられます。
 精密検査では、内耳が障害されたパターンを示し、めまいをともなう場合は、眼振(がんしん)(異常な眼球運動(がんきゅううんどう))がみられることがあります。
[治療]
 確立された治療法はまだなく、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬、循環改善薬(じゅんかんかいぜんやく)、代謝賦活剤(たいしゃふかつざい)、ビタミン剤を使用し、安静を保ちます。星状神経節(せいじょうしんけいせつ)ブロック高圧酸素療法(こうあつさんそりょうほう)、ウログラフィンの使用も行なわれることがあります。
 発症後受診が早い場合、比較的年齢が若い場合、難聴の程度が軽い場合、いくつかの型の聴力像を示す場合、めまいをともなわない場合などは、治りやすい傾向にあります。
[日常生活の注意]
 約4分の1は治りますが、残りの4分の3は約1か月で症状が固定し、難聴、耳鳴りなどの後遺症(こういしょう)が残ります。気長に、症状に応じた治療を続け、健康なほうの耳を大事にしましょう。
[予防]
 ストレスも原因の1つといわれています。心身疲労を避け、規則正しい生活を心がけましょう。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「突発性難聴」の意味・わかりやすい解説

突発性難聴
とっぱつせいなんちょう

特別な原因がないのに、突然、高度の難聴と耳鳴りがおこる。ときには、めまい、吐き気などを伴うことがある。このような発作は一般的には反復しておこることはない。難聴の性質は感音難聴である。一側性が大部分で、両側性は7%くらいといわれている。小児におこることはきわめてまれで、青年期以後、とくに50歳前半に多い。

 感音難聴はメニエール病を除いては回復するものがほとんどないが、このような突発性難聴では正常聴力にまで回復することも多い。発病してからの期間が3か月にもなったものでは改善しにくいので、早期発見と早期治療が重要である。

 原因は不明であるが、ウイルス感染や内耳の循環障害が推測される例もある。内耳窓破裂も同様の症状で、以前は突発性難聴と診断されていたものもあるはずであるが、逆に原因が明らかとなったものは突発性難聴とはよばない。ウイルス感染でも流行性耳下腺(せん)炎による同様の感音難聴が昔からよく知られていたので、この難聴は突発性難聴には入れない。したがってこの名称で現在はよばれていても、医学の進歩により原因が明らかになれば、この病名から外される。

 治療として特効的なものはまだないが、副腎(ふくじん)皮質ホルモン、ビタミンB剤、末梢(まっしょう)循環改善剤の投与のほか、星状神経節ブロックや高圧酸素療法などが行われている。自然治癒することも少なくない。

[河村正三]

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改訂新版 世界大百科事典 「突発性難聴」の意味・わかりやすい解説

突発性難聴 (とっぱつせいなんちょう)
sudden deafness

聴覚に異常のなかった人が突然難聴になることで,その特徴として次の三つの主症状があげられる。すなわち,(1)突発的に難聴が発現する,(2)難聴の性質は高度の感音性難聴である,(3)難聴の原因が不明,の三つである。さらに副症状として,(1)耳鳴りが難聴と同時に,または前後して発現する,(2)めまい(吐き気,嘔吐を伴うことがある)が難聴と同時に,または前後して発現することがあるが,めまい発作を繰り返すことはない,(3)第8脳神経(内耳神経)以外に顕著な神経症状を伴うことがない,などがある。これらの特徴を示す難聴は突発性難聴と診断される。日本における患者数は人口100万対25~30である。罹患年齢分布は40歳代が最も多く,男性にやや多い。大部分が一側性に発現し,左右差はない。精神的・肉体的過労が誘因となる。原因として内耳の血液循環障害説,ウイルス感染説,代謝障害説,蝸牛窓膜破裂説などがあるが,まだ解明されていない。治療は早期に開始するほど回復率は高い。通常,副腎皮質ホルモン,血管拡張剤,ビタミンB剤,循環調整剤などの投与が奏効する。高圧酸素療法なども有効である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「突発性難聴」の意味・わかりやすい解説

突発性難聴
とっぱつせいなんちょう
sudden deafness

突然,片側の耳が聞えなくなる感音性の難聴。内耳から大脳皮質にいたる聴覚伝導路上の病変で発症する。同時に耳鳴りやめまいを伴うこともある。原因は不明であるが,ウイルス感染,内耳の血管障害,正円窓 (蝸牛窓) 破裂などが考えられ,これらが重なりあって一つの臨床症状を示す疾患群とみられている。風邪をひいているときや疲労時,精神的なストレスが強いときに起ることが多い。治療は決定的なものはないが,発症後すぐに治療を開始するとよくなることが多い。

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世界大百科事典(旧版)内の突発性難聴の言及

【難聴】より

…両者の大きな相違は,内耳(蝸牛)が障害された内耳性難聴では,音が大きく響いて困るというレクルートメント現象(補充現象)を示すことである。内耳性難聴は過大な音を突然きいたために起こる音響外傷,長年月の間,強大音にさらされたために起こる騒音性難聴(職業性難聴ともいう),ストレプトマイシンに代表される聴器毒による中毒性難聴,めまい発作を伴うメニエール病,原因不明であるが突然に高度の難聴をきたす突発性難聴などがその代表例である。難聴の程度はある特殊な周波数帯域,たとえば,4000Hzのみが低下する場合から全聾になるものまで多種多様である。…

【耳】より

…難聴を起こすものには奇形,炎症,薬剤による中毒,遺伝性疾患,その他原因不明の疾患などがある。突発性難聴は急激に生ずる高度感音難聴で,ウイルス感染,血液循環障害などが原因と考えられている。ある種の抗生物質は難聴に強い毒性を有しており,有毛細胞の消失を起こす。…

【メニエール病】より

…しかし,めまいを起こす病気をすべてメニエール症候群というと,いろいろな病気が含まれてしまう。たとえば,1回だけの発作で,かなり高度な難聴となり,激しいめまいを起こす突発性難聴,耳鳴り,難聴などは伴わないが激しいめまい発作を1回だけ起こす前庭神経炎,さらには,めまいとともに,物が二重に見える(複視),うまくしゃべれない(言語障害),意識を失うなどの脳の神経の症状を伴う脳幹や小脳の病気まで,メニエール症候群となってしまう。したがって今日では,典型的なメニエール病は厳密に区別され,くりかえすめまい発作に必ず耳鳴り,難聴を伴い,脳の病気から生ずる神経の症状はまったくない内耳の病気に対してのみ,メニエール病の診断がつけられている。…

【めまい】より

…また内耳の異常は,自律神経にも伝えられ,心臓がどきどきしたり,冷や汗がでたり,吐き気がして吐いたりする。このような内耳の病気が原因で起こるめまいには,メニエール病のほかに,発作性頭位眩暈,突発性難聴,前庭神経炎などと呼ばれる病気がある。発作性頭位眩暈は,内耳の前庭の中にある耳石器の障害で起こることが多く,その特徴は頭や身体の位置を変えたとき,すなわち急に寝たり起きたりしたり,寝返りをうったりしたときにだけ起こるめまいである。…

※「突発性難聴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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