飲料を長時間保温、または保冷する容器。日本には携帯用のものが1911年(明治44)に初めてドイツから輸入された。熱の伝導、対流、放射を少なくするため、二層にしたガラス瓶の内壁に、銀めっきをし、中間を真空にした中瓶を使い、さらに外側には中瓶を保護するための外装が施されている。中瓶にはホウケイ酸ガラスが、また外装にはプリント鋼板、塩ビ鋼板、プラスチック、銅、ステンレスなどが使われている。1892年、イギリスの化学・物理学者J・デュワーが、液体ガスを保存するために発明したのでデュワー瓶ともいう。
卓上用には、手で持ち上げて湯をつぐハンド式のもの、蓋(ふた)を押して空気を送り込み、その空気圧によって湯を押し出すエア式のもの、モーターで湯を吸い上げる電動式のものなどがある。家庭用品品質表示法によって、表示事項や表示方法が定められており、その保温効力は、95℃プラスマイナス1℃の熱湯を満たして24時間および10時間(屋外で使用するものは6時間)放置した場合の温度で表されている。
[正木英子]
保温保冷に用いる容器。二重のガラス瓶の中間を真空にし,内面を銀めっきして熱の伝導,対流,放射の程度を少なくしている。ドイツの物理学者A.F.ワインホルトの発見した原理にもとづき,1893年イギリスの化学・物理学者J.デュワーが実験の必要から液体ガスを保存するために発明したのでデュワー瓶ともいう。日本に伝えられたのは1910年ころで,円筒形細口のテルモス魔法瓶をドイツから輸入した。輸入当時は〈保温保冷24時間保証の真空瓶〉とも呼ばれた。12年に国産品を完成したが飲料水が良質な日本では用途が少なく,価格が高いこともあって,貴金属店や時計店で取り扱われていた。魔法瓶工業の基礎は第1次世界大戦のころ確立され,東南アジアを主とした輸出向けの生産によって発達した。50年代中ごろになると価格も低減し,簡易で経済的・衛生的な効用が広く認識されて国内需要も高まった。73年以後は空気圧を利用して湯を出すエアポットが全盛である。82年の魔法瓶の国内消費量は,携帯用が425万本,卓上用が1260万本である。
執筆者:南本 珠己
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…瓶は容器革命で缶,紙容器,ペット・ボトルなどへの転換が進んでいるが,一方でガラス業界もワンウェー(使い捨て)瓶の開発などで対応している。自動製瓶による瓶,大量生産型ガラス食器,電子管用バルブなどはおもに大企業で生産されるが,人工瓶,魔法瓶など中小企業によって生産されている製品も数多くある。 日本では,すでに江戸時代に眼鏡や食器などのガラス製品が製造されていた。…
※「魔法瓶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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