ガンピ(雁皮)を原料とした和紙。奈良時代の斐紙(ひし)の系統を受け継いだきわめて上質の紙で、この紙名は嘉暦(かりゃく)年間(1326~29)の文献に初めてみられる。紙の色が鳥の子、つまり鳥の卵の殻に似ているのでこの名がある。中世に地方製紙が盛んになるにつれ、とくにガンピの入手しやすい地方で、古代の斐紙の伝統がさらに発展して生まれたものと思われる。名産地として、室町時代以降は越前(えちぜん)国(福井県)が名高く、加賀国(石川県)、阿波(あわ)国(徳島県)がこれに続き、江戸時代には摂津国名塩(なじお)(兵庫県西宮市)や和泉(いずみ)国(大阪府)阿間河(あまがわ)で、特色のある鳥の子が漉(す)かれた。
ガンピの繊維は繊細で均一、しかも美しい光沢があるうえに、粘性のヘミセルロースの含有量が多いため良質の紙ができる。1712年(正徳2)成立の寺島良安著『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』にも「肌滑らかで書きやすく、紙質は引き締まって耐久力があり、紙の王ともいえる」と賞賛している。1603年(慶長8)刊の『日葡(にっぽ)辞書』に、薄様、厚様、内陰(うちぐもり)、間似合(まにあい)、鳥の子など、一連の雁皮紙系統の紙名がほかに比べて多く採録されているのは、室町末期の知識人や渡来した宣教師たちに広く愛用されていたことを物語っている。
現在はミツマタ(三椏)を代用とした鳥の子を製造する技術が進み、局紙をはじめ証券、辞令、美術書などのとくに愛蔵する書物に使用され、美術紙として海外でも喜ばれている。
[町田誠之]
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