鳥の子紙(読み)トリノコガミ

デジタル大辞泉 「鳥の子紙」の意味・読み・例文・類語

とりのこ‐がみ【鳥の子紙】

雁皮がんぴを主原料とした上質の和紙鶏卵の色に似た淡黄色で、強く耐久性があり、墨の映りもよい。福井県・兵庫県産のものが有名で、越前鳥の子・播磨紙はりまがみともいわれる。

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精選版 日本国語大辞典 「鳥の子紙」の意味・読み・例文・類語

とりのこ‐がみ【鳥子紙】

  1. 〘 名詞 〙 雁皮(がんぴ)で製される上等な和紙の一種。鳥の卵のような淡黄色をしているのでこの名がある。厚様・中様・薄様の区別があり、中古は書冊・書簡の用紙として、中世以後はさらに加工して襖(ふすま)紙・色紙短冊などとして用いられた。各地で漉(す)かれているが、五箇(福井県今立町)・名塩(兵庫県西宮市)産出のものが最上といわれている。普通より大形で半間(げん)の間(ま)に合うように作られたものを間合(まにあい)といい、屏風(びょうぶ)・襖を張るのに使われた。着色土・蛤粉などをまぜたものを泥間合、短冊の上下に青・藍の雲形を漉き込んだものを内曇、墨で様々な形を染めたものを墨流、淡色の色紙などに水を点々とたらしたものを水玉という。とりのこ。
    1. [初出の実例]「真座敷(しんのざしき)とて鳥子紙の白張付、杉板のふちなし天井」(出典:南方録(17C後)棚)

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改訂新版 世界大百科事典 「鳥の子紙」の意味・わかりやすい解説

鳥の子紙 (とりのこがみ)

中世につくられた雁皮(がんぴ)を主原料とした紙で,雁皮紙を代表する紙名といえる。鳥の子の名称は嘉暦年間(1326-29)に初出する。名称の由来については,西の内紙の産地でもある茨城県那珂郡鷲子村(現,常陸大宮市)に由来するとの説もあるが,多くは未ざらしの雁皮紙が鶏卵の淡黄色に似ているところに由来するという説を採っている。代表的な産地は越前(武生敦賀,越前紙)と摂津(名塩紙)である。越前の鳥の子紙は,薄様(うすよう),中様(ちゆうよう)などの厚さの違いのほか,内曇(うちぐもり),水玉(みずたま),漉(す)き模様(当時は絵鳥の子などと称した),墨流しなどの装飾をほどこしたり,植物染による各色の色鳥の子紙など,技巧的に優れたものが多かった。名塩の鳥の子紙は,地元の特産である卵色の尼子天子)土を混入するなど,粉入鳥の子紙に特色があった。現在,鳥の子紙として漉かれているのは,越前紙(福井県越前市),名塩紙(兵庫県西宮市)のほか,近江鳥の子紙(滋賀県大津市),加賀鳥の子紙(石川県川北町),土佐鳥の子紙(高知県いの町),出雲民芸紙(島根県松江市)などがあげられる。用途は,仮名書きなどの料紙,日本画などの画材用紙などで,楮紙(こうぞがみ)に比べてきわめて狭く,今後の販路の拡大が求められる。現在の鳥の子紙にはミツマタ木材パルプを用いてつくられ,襖(ふすま)紙などに用いられているものもある。
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百科事典マイペディア 「鳥の子紙」の意味・わかりやすい解説

鳥の子紙【とりのこがみ】

ガンピコウゾを原料とした良質の和紙。淡黄色を帯び,卵の殻の色に似るので,この名があるという。紙質は厚く,緻密(ちみつ)で,光沢がある。主産地は福井県。滋賀県産の近江鳥の子はガンピ繊維だけですかれ,西陣織の金銀糸の原紙,短冊,色紙,表装などに使う。現在はミツマタや木材パルプを原料とした機械ずきのものもある。→越前奉書
→関連項目局紙溜漉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳥の子紙」の意味・わかりやすい解説

鳥の子紙
とりのこがみ

和紙の一つ。単に鳥の子ともいい,紙面がなめらかで鶏卵のような淡黄色の光沢があるので,こう呼ばれる。ガンピ (雁皮)をおもな材料とし,コウゾ (楮)なども加えて漉 (す) いた良質紙。厚手と薄手がある。常陸国那珂郡鳥子村を原産地とする説は,後世の付会であろう。南北朝時代から室町時代に盛んに用いられ,短冊,屏風,襖 (ふすま) 紙,勧進帳をはじめ意匠を凝らした書物の用紙に用いられた。厚手のものは,表裏に写字できたから,一般的な袋綴 (ふくろとじ) ではなく,粘葉綴 (でっちょうとじ) にした書物に用いられた (→粘葉装 ) 。のちミツマタ (三椏) を用いるようになって現在に及んでいる。越前国敦賀 (つるが) や摂津国名塩が名産地とされた。

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図書館情報学用語辞典 第5版 「鳥の子紙」の解説

鳥の子紙

本来は雁皮紙の一種で,鶏卵のような淡黄色をしているところから名付けられたといわれる.主に書写用紙として使用される.

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「鳥の子紙」の解説

鳥の子紙
とりのこがみ

雁皮(がんぴ)を原料にした光沢のある強靭な和紙。やや薄茶色をし,鶏卵の殻(から)の色に似るところからこの名がある。室町時代には越前産のものが都への土産として珍重されたと記される。紙質は優れているが原料の雁皮が栽培できないため,江戸時代には写経や上紙,領主発給の文書などに用いられ,大衆に広く用いられることはなかった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「鳥の子紙」の解説

鳥の子紙
とりのこがみ

和紙の一種で,薄茶色で光沢ある堅牢な紙
楮 (こうぞ) と雁皮 (がんぴ) を原料とする。鶏卵の色をしているところからその名がある。鎌倉時代から寺社の勧進帳や武家の文書などに用いられた。古くは越前産のものが有名。江戸時代に摂津・和泉・周防 (すおう) などでも特産となる。

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世界大百科事典(旧版)内の鳥の子紙の言及

【雁皮紙】より

…内曇の技法は現在も越前紙に伝承されており,小間紙(美術紙)にはガンピを生かした手法が多い。中世には鳥の子紙や間似合紙(まにあいがみ)とよばれる雁皮紙が現れる。鳥の子紙は雁皮紙の未ざらし色が鶏卵の淡黄色に似ているところから名前が出た。…

【美和[村]】より

…那珂川支流の緒川が中央部を流れ,南部を国道293号線が横断する。江戸時代に鷲子紙(鳥の子紙)と呼ばれた手すき和紙の生産が盛んとなり,紙商人の往来でにぎわった。明治以降,洋紙におされて生産は衰退し,代わって葉タバコやコンニャクが生産された。…

【料紙】より

…文書をはじめ典籍,経典等の文字を書くときに使用する紙のこと。日本で用いられた料紙は,原料によって麻紙,楮(こうぞ)紙,斐(ひ)紙,三椏(みつまた)紙等がある。麻紙は白麻,黄麻を原料とした紙で,奈良時代から平安時代初期に多く用いられ,特に写経用として珍重された。コウゾは日本の各地に簇生し,これを原料としたのが楮紙である。原料が豊富でしかも繊維が強靱で実用性に富んでいるため,楮紙は古くから料紙の中心的地位を占めてきた。…

※「鳥の子紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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