局紙(読み)キョクシ

デジタル大辞泉 「局紙」の意味・読み・例文・類語

きょく‐し【局紙】

ミツマタ原料とする、丈夫でつやのある上質の紙。辞令用紙証券用紙などに用いる。明治8年(1875)大蔵省抄紙局が設けられ、そこで創製された。

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精選版 日本国語大辞典 「局紙」の意味・読み・例文・類語

きょく‐し【局紙】

  1. 〘 名詞 〙 ( 抄紙局製の紙の意 ) 明治一八年(一八八五)頃大蔵省抄紙局で、三椏(みつまた)からつくった手すき紙。後に機械すきとなり、今日では財務省印刷局のほか民間でもつくり、証券、株券賞状、辞令用紙などに用いられる。
    1. [初出の実例]「本邦独得専占の特産あり。普通に局紙(キョクシ)と称し、専門家の手漉印刷紙と称する者是れなり」(出典:北国物語(1905)〈西村天囚〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「局紙」の意味・わかりやすい解説

局紙 (きょくし)

1874年(明治7),東京の王子に大蔵省印刷局抄紙部が創設された。これは印刷局の3代目局長得能良介が,紙幣公債証書の偽造防止のうえからも,日本独特の優秀な紙を作りだす必要があると,越前の紙すき職人をよんで印刷局のなかに手すき工場を設立したものである。はじめ,日本独特の原料であるガンピを使って,印刷効果の良い紙をすくことを試みたが,ガンピの栽培が難しく,大量の原料確保が困難なため,類似の繊細な繊維をもつミツマタを原料とした。いろいろの試作の結果,溜(た)めすき法によって紙肌が滑らかで,紙の腰が強く,緻密(ちみつ)な印刷が可能な厚紙を完成し,印刷局にちなんで〈局紙〉の名称が与えられた。この紙は78年,パリの万国博覧会に出品され,高く評価されて世界的に知られるようになり,85年には多量に輸出されるようになった。これを輸入したオーストリア亜硫酸パルプを用いて模造したものが日本に逆輸入され,これをさらにまねて作ったものが模造紙である。はじめは手すき紙であったが,のちに機械すきも行われた。現在,越前紙(福井県今立郡今立町)など民間でもすかれている。そのおもな用途は,証券・株券・賞状・辞令用紙などである。
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百科事典マイペディア 「局紙」の意味・わかりやすい解説

局紙【きょくし】

ミツマタを原料とし,鳥の子紙に似せて作った手すき和紙。明治初期に内閣印刷局(現在大蔵省所管)で製造されたので,この名がある。普通は淡黄色で,厚く,緻密(ちみつ)で,耐久性がある。1878年パリ万国博覧会で高く評価されて以来,多量に輸出されるようになった。用途は証券,賞状,美術印刷物などの用紙。現在福井県などに産し,機械ずきもある。→模造紙
→関連項目溜漉

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「局紙」の意味・わかりやすい解説

局紙
きょくし

1875年(明治8)に大蔵省に設けられた印刷局抄紙部で、特別に紙幣や証券用に抄造された上質紙。古来の和紙のなかから、ガンピ(雁皮)を主原料とする鳥の子紙に着目し、越前(えちぜん)(福井県)から専門家を招いて、ミツマタ(三椏)を代用し同様の上質紙の製造に成功した。これを一般に局紙とよぶ。77年に海外へ初輸出され、日本羊皮紙あるいは植物性羊皮紙とよばれて世界的に有名になった。

[町田誠之]

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