寒さ,恐怖,強い精神感動などによって皮膚の立毛筋が収縮し,皮膚の一部が隆起してちょうど毛をむしり取った鳥の肌のような状態をいう。鵞皮(がひ)ともいい,〈肌に粟(あわ)を生ずる〉というのも同じ現象である。起こりやすいのは大腿,下腿,腕などで,限局性に起こることもあるが,しばしば1ヵ所に始まって周辺に波状に伝搬し,体の半側内で終わることが多い。立毛波が頸部に始まって背部を下行することは日常よく経験するところで,〈背中に水を浴びせられたような〉と形容される,一種いいがたい感覚を伴う。立毛が全身的に起こる感じには〈総毛立つ〉という言葉がよく用いられる。立毛筋は交感神経の支配を受けているため,不随意に起こる。一般には,交感神経の強い緊張をもたらす刺激は鳥肌を起こしやすい。寒冷刺激によって皮膚血管の収縮とともに立毛反射が起こると,被毛のある動物では毛の間に保持される空気の層が厚くなる。空気は熱の絶縁性が大きいので,毛を立てた状態ではちょうど衣類を重ねるのと同じように熱絶縁が増し,体熱の放散を減少させるのに役立つ。寒いときに小鳥が羽毛を立てるのもそのためである。外敵に襲われた動物では交感神経の緊張が最大となって,立毛によって体を大きく見せて敵を驚かせようとするのであろう。ハリネズミが針を立てるのは立毛反射の変形と解される。ヒトでは不愉快な感覚刺激,がまんできない便意,温度刺激,急激な情動変化,あるいはそれらの期待のみでも鳥肌を起こすことがある。過度の精神緊張による武者震いのときにはたいてい鳥肌を伴う。鳥肌の意義は立毛にあるから,体毛の少ない人類ではあまり有用ではない。〈怒髪天を衝(つ)く〉という漢語があるが,頭髪が立毛反応を起こすことはきわめてまれなことであろう。
執筆者:中山 昭雄
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鵞皮(がひ)ともいう。毛は皮膚の表面に対して斜めに生えており、毛および毛包(毛嚢(もうのう))が鈍角をなす側に立毛筋が付着し、皮膚の表面に向かって斜走している。したがって立毛筋が収縮すると毛が立って毛孔を中心に高まりが生ずる。その状態は一見、羽毛をむしり取った鳥の肌に似ているので鳥肌といい、そうなることを鳥肌立つという。この現象は寒冷にさらされたときにもっとも多く現れるが、恐怖感や不快感に襲われてぞっとしたときにもみられる。
[齋藤公子]
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…多くは1本の毛に1個の立毛筋が付属している。立毛筋は,毛と表皮とがつくる鈍角の側に存在しているから,その収縮によって毛を直立させて,いわゆる〈鳥肌goose flesh〉をつくる。四肢の伸側には毛が多いので,鳥肌もこの部で著しい。…
…このとき実際の体温はまだほぼ正常レベルにあるので,目標温度にすみやかに到達するように急激な体温上昇反応がおこる。この時期に悪寒を感じ,皮膚血管は強く収縮して熱放散を減少させ,立毛筋が収縮して鳥肌となり,骨格筋は震えによって熱産生を増加させる。悪寒は,体温が上昇して新しい調節レベルに達するまで続く。…
…多くは1本の毛に1個の立毛筋が付属している。立毛筋は,毛と表皮とがつくる鈍角の側に存在しているから,その収縮によって毛を直立させて,いわゆる〈鳥肌goose flesh〉をつくる。四肢の伸側には毛が多いので,鳥肌もこの部で著しい。…
…皮膚の特殊な乾燥,粗糙(そぞう)化(ざらざらになること)した状態の俗称。一般には欧米のfish skin,日本名の魚鱗癬(ぎよりんせん)ichthyosisに当たる変化を指すが,これを文字どおり〈サメの肌〉と解釈して毛孔性苔癬lichen pilarisを当てる向きや,さらに拡大して鳥肌goose skinまで含める見解もある。魚鱗癬は皮膚の乾燥,粗糙化と魚鱗様変化の出現を特徴とする病気で,種類も多いが,今日までその分類は国際的に統一をみていない。…
…冷点は40℃以上の高温によって刺激されても冷感をおこす(矛盾冷感)。熱い風呂に飛び込んだとき一瞬冷たさを感じて,鳥肌がたつのはこのためである。冷点には,冷覚を伝える末梢神経繊維(冷繊維)に付属した冷覚受容器がある。…
※「鳥肌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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