日本大百科全書(ニッポニカ) 「麻薬条約」の意味・わかりやすい解説
麻薬条約
まやくじょうやく
conventions on narcotic drugs
従来は1961年の麻薬単一条約(64年発効、同年わが国批准)および72年の同条約改正議定書(75年発効、73年わが国批准)があった。1912年条約以来の国際協力の経験に照らし、(1)麻薬の医学・学術目的に限定した利用、(2)各国の麻薬輸入見積り量の審査と監視、(3)輸入超過国の公表と他国への通報によって麻薬取引を国際的に規制するとともに、(4)犯罪人の引き渡し制度と国外犯への刑事管轄権拡大により、不正取引の防止対策を進めてきた。改正議定書による向精神剤の追加および1971年の国連麻薬統制計画の開始(麻薬患者の治療、青少年教育、途上国援助を含む)により統制の効果はいっそう強まった。国連麻薬委員会と国際麻薬統制委員会が中心機関としてそれぞれ政策決定と監視にあたるほか、他の国際機関(WHO、FAO、国際刑事警察機構)も協力体制をとることとした。さらに88年の麻薬・向精神薬国連条約(92年わが国批准)は、不正取引に関する各国の刑事管轄権を強化した。22の規制薬物の生産、製造、販売、輸送、所持について国内法上の犯罪とし相応した刑罰を科すること、自国の領域・船舶・航空機内で行われた犯罪や外国人の国外犯について裁判権利を設定したり、犯罪人の引渡しや監視付移転に関する司法協力のための国内措置をとることなどを定めた。
[山本草二]