黒焼(読み)クロヤキ

デジタル大辞泉 「黒焼」の意味・読み・例文・類語

くろ‐やき【黒焼(き)】

動植物土器に入れて蒸し焼きにし、炭化させたもの。漢方薬などの製法の一。「イモリ黒焼き

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精選版 日本国語大辞典 「黒焼」の意味・読み・例文・類語

くろ‐やき【黒焼】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 蒸焼きにして黒こげにすること。薬用とするための動植物を焼いたものをさすことが多い。
    1. [初出の実例]「其をくわうと云は無理なぞ。たとへば雪のくろやきくろう蛇のすしくわうと云程の事ぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一四)
  3. ( 「井守(いもり)の黒焼き」の略 ) イモリを黒く焼いたもの。肺結核などに効用があるとされ、また特に、粉末を人に振りかけると、その人に好かれるほれ薬としてききめがあると信じられていた。

くろ‐やけ【黒焼】

  1. 〘 名詞 〙 黒く焼けること。また、そのもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒焼」の意味・わかりやすい解説

黒焼
くろやき

薬用を目的として動植物を蒸し焼きにしたもので、「霜(そう)」ともよばれる。黒焼にされるものは多種にわたり、草根木皮のほか、哺乳(ほにゅう)類、鳥類爬虫(はちゅう)類、昆虫類などが多い。黒焼にする方法は、一般には専用の甕(かめ)、あるいはほうろう容器を用い、蓋(ふた)をしたのちに合わせ目を封じ、炭火などで焼く。大量に処理する場合もこの原理で行われる。簡便法として、ぬらした和紙にくるんで炉火の灰中に埋めておくこともある。黒焼の利用方法は、室町時代に中国からもたらされたといわれており、江戸時代にわが国で独自に発展し、漢方医はもとより、民間療法にも多く用いられた。現在しばしば用いられている黒焼には、次のようなものがある。

 鹿角霜(ろっかくそう)=シカの角(つの)の黒焼。熱を散じて血を巡らす作用があり、各種の腫(は)れ物に用いる。乱髪霜(らんぱつそう)=人髪の黒焼。主として止血薬として衄血(じくけつ)(鼻出血)、月経過多などに用いる。猿頭霜(えんとうそう)=サルの頭の黒焼。精神不安、ヒステリーなどに用いる。土竜霜(どりゅうそう)=モグラの黒焼。興奮、強壮解毒の効があるとされる。反鼻霜(はんびそう)=いわゆるマムシの黒焼。強壮、排膿(はいのう)、肉芽組織形成促進などの効があり、虚弱体質者の化膿性疾患に用いる。イナゴの黒焼=小児の夜泣きに用いる。ナスビのへたの黒焼=焼き塩少量と混合して歯痛時に塗擦する。黄柏(おうばく)(キハダ)の黒焼=ごま油で練って火傷(やけど)に、酢で練って捻挫(ねんざ)に用いる。

 また、黒焼を配合した漢方処方に伯州散(はくしゅうさん)がある。これは津蟹霜(しんかいそう)(サワガニの黒焼)、反鼻霜、および鹿角霜を等分に処方したもので、とくに慢性あるいは亜急性の化膿疾患に内服薬として用いる。

[難波恒雄・御影雅幸]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒焼」の意味・わかりやすい解説

黒焼
くろやき

薬用として動植物を黒く蒸焼きにしたもの。日本では寛政年間 (1789~1801) 頃から行われた民間薬で,その薬効については疑問のものが多い。一例を示せば,子供の百日咳にはツルの足焼,婦人の乳房の傷にはコイの黒焼,夫婦の和合にはイモリの黒焼,咳にはナシの黒焼といったようなもの。

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