サワガニ(読み)さわがに(英語表記)Japanese freshwater crab

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サワガニ」の意味・わかりやすい解説

サワガニ
Geothelphusa dehaani

軟甲綱十脚目サワガニ科。本州四国地方九州地方谷川清流にすむ淡水産のカニ。日本固有種で,南限は吐噶喇列島北端の口之島。甲は幅 2.5cmほどの丸みを帯びた四角形で,生息場所により紫褐色,朱赤色,淡青色と変化に富む。卵は直径 3~4mm。産卵数は 20~70個と幅があるが,40個ぐらいの場合が多い。すべての幼生期を卵内で過ごして稚ガニの形となって孵化し,その後しばらく親ガニの腹部にいだかれて保護される。から揚げにしたり甘辛く味つけして食用にする。ウェステルマン肺吸虫(→肺吸虫)の第2中間宿主となるので生食酢漬は危険。九州南部にミカゲサワガニ G. exigua奄美大島,沖縄地方ではリュウキュウサワガニ G. obtusipes など 4属 20種が記録されている。亜熱帯,熱帯地方には淡水産カニ類が多く,freshwater crabあるいは river crabと総称されている。(→甲殻類十脚類節足動物軟甲類

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「サワガニ」の意味・わかりやすい解説

サワガニ
さわがに / 沢蟹
Japanese freshwater crab
[学] Geothelphusa dehaani

節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目サワガニ科に属するカニ。本州、四国、九州にすむ唯一の純淡水産の種。南限は吐噶喇(とから)列島口之島で、かつて沖縄諸島や台湾まで分布するとされたのはリュウキュウサワガニG. obtusipesの誤りである。甲幅2.5センチメートルほどの丸みのある四角形で、前側縁が丸く膨らむ。眼窩(がんか)外歯に続いて痕跡(こんせき)的な切れ込みがあり、そこから小顆粒(かりゅう)が連なって細い稜(りょう)を形成する。はさみ脚(あし)は雄では左右不同で、右が大きい個体が多く、また十分に成長すると不動指が曲がって可動指との間にすきまが残る。色彩はすみ場所によって微妙に異なるが、紫黒褐色、朱赤褐色、淡青灰色が基本型である。

 雑食性で生命力が強く、大形個体は水からやや離れてすむ。産卵期は夏で、抱卵数は40個前後のことが多い。海産のカニに比べると卵数がはるかに少ないが、卵径は3~4ミリメートルもあり、稚ガニとして孵化(ふか)する直接発生である。抱卵雌は約1か月間川岸の石の下などで過ごし、水中で稚ガニを孵化させたのちもしばらく腹部に抱いて保護する。稚ガニは甲幅4~5ミリメートルで、2週間くらいあとに脱皮し、5~7ミリメートルになる。翌年2、3回の脱皮で8~11ミリメートルに、3年目も同様の脱皮で12~17ミリメートルに成長する。4年目で甲幅2センチメートルほどの成体になり、5年目で成熟する。から揚げや佃煮(つくだに)などにされるほか、最近ではペットとしての需要が多い。

[武田正倫]


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