ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サワガニ」の意味・わかりやすい解説
サワガニ
Geothelphusa dehaani
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節足動物門甲殻綱十脚(じっきゃく)目サワガニ科に属するカニ。本州、四国、九州にすむ唯一の純淡水産の種。南限は吐噶喇(とから)列島口之島で、かつて沖縄諸島や台湾まで分布するとされたのはリュウキュウサワガニG. obtusipesの誤りである。甲幅2.5センチメートルほどの丸みのある四角形で、前側縁が丸く膨らむ。眼窩(がんか)外歯に続いて痕跡(こんせき)的な切れ込みがあり、そこから小顆粒(かりゅう)が連なって細い稜(りょう)を形成する。はさみ脚(あし)は雄では左右不同で、右が大きい個体が多く、また十分に成長すると不動指が曲がって可動指との間にすきまが残る。色彩はすみ場所によって微妙に異なるが、紫黒褐色、朱赤褐色、淡青灰色が基本型である。
雑食性で生命力が強く、大形個体は水からやや離れてすむ。産卵期は夏で、抱卵数は40個前後のことが多い。海産のカニに比べると卵数がはるかに少ないが、卵径は3~4ミリメートルもあり、稚ガニとして孵化(ふか)する直接発生である。抱卵雌は約1か月間川岸の石の下などで過ごし、水中で稚ガニを孵化させたのちもしばらく腹部に抱いて保護する。稚ガニは甲幅4~5ミリメートルで、2週間くらいあとに脱皮し、5~7ミリメートルになる。翌年2、3回の脱皮で8~11ミリメートルに、3年目も同様の脱皮で12~17ミリメートルに成長する。4年目で甲幅2センチメートルほどの成体になり、5年目で成熟する。から揚げや佃煮(つくだに)などにされるほか、最近ではペットとしての需要が多い。
[武田正倫]
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