〘形口〙 ひく・し 〘形ク〙 相対的に、上下関係として把握
(はあく)できる
事柄で、
下位にあるさま。
[一] 空間的に下の方にあったり、下の方まで広がってあったりするさま。
① 下の方にある。下の方に位置している。
※玉塵抄(1563)
二三「下はひくいとよむか
ひきいことを云には川や沢を云ぞ川さわよりひくい所はないぞ」
② ある
基点からの盛り上がりや突き出しの程度が少ない。下からの長さ、隔たりが小さい。「鼻が低い」
③ 丈が短い。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「セイノ ficui(ヒクイ)モノ」
※やみ夜(1895)〈樋口一葉〉三「心は低(ヒク)くせよ身を惜しむな、其身に合ひたる労働ならば夫れ相応に世話しても取らすべしとて」
① 身分や地位、生活程度などが下位にある。
※玉塵抄(1563)四四「位のひくいはやすい玉を持ぞ。圭はたかい玉なり、
宰相が持つ玉なり」
② (抽象的な事柄について) その
力量・
知力・思想や機能などの点で劣っている。一定の知的水準に達していない。「
見識が低い」「低い次元の話」
※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)三「ニクシンワ ficuqi(ヒクキ) コトヲ モトムル トキンバ、ワガミト トモニ カッセンシ ワレト ワガミヲ ヲモニト ヲモウ ナリ」
③ 体裁、構成、
調子などの張り、緊張感に乏しい。説得力に欠ける。「調子の低い演説」
[三] 数量が少ないさま。
① 金がかからない。廉価である。安い。
※公家言葉集存(1944)八「ヒクイ 低価なること」
② 温度、湿度、
硬度、
緯度などの上下強弱などの度合で、下の方、弱い方である。
※制度通(1724)一「天のめぐりは北高く南卑く」
③ 音や声が小さくて弱い。また、低音である。音や声の振動数が少ない。
※和英語林集成(初版)(1867)「コエガ hikui(ヒクイ)」
④ 射芸で、張弓の弦と弓との距離が狭い。
[語誌]古く「低」の意には漢文訓読文では「ひきなり」、平仮名文では「みじかし」「ちひさし」などが用いられていた。平安末ごろに「ひきし(ひきい)」が成立したが、「ひきし」の変化した「ひくし(ひくい)」が一般化するのは室町時代末以後である。
ひく‐げ
〘形動〙
ひく‐さ
〘名〙
ひく‐み
〘名〙