在日外国人をおもな読者とし、そのほか学生、商社関係などの日本人読者を対象として、英語を使って発行している新聞。英字紙ともいう。現在日本で発行されている日刊英字新聞には、1897年(明治30)創刊のThe Japan Times、毎日新聞社発行のMainichi Daily News(1922創刊)、読売新聞社発行のThe Daily Yomiuri(1950創刊)、朝日新聞社発行の夕刊紙Asahi Evening News(1954創刊)などがある。このうちThe Japan Timesは、日本人の手で発行された最初の英字新聞である。
日本で発行された英字新聞の歴史は古く、幕末から明治初期にかけ、長崎や横浜などの居留地に住んでいた外国人向けに、在日英米人によって発行された。その最初のものは1861年(文久1)長崎で発行されたThe Nagasaki Shipping List and Advertiserといわれる。最近は、高校生や大学生向けに英語の週刊新聞も発行されている。
日本における英字新聞の発行部数は、世界的に類をみないほどの規模と普及率を兼ね備えた一般誌と比べると低く、たとえばThe Japan Timesの発行部数は約6万2800部、The Daily Yomiuriは約5万0400部(1997)である。第三世界では、英字新聞は相対的に発行部数が低くとも一部の知識人の重要な情報ソースとなることによって高い発言力をもつことも多いが、日本ではそのような状況にはないといえる。その一方で、在日外国人は日本の新聞や社会についてのイメージを英字新聞からつかむことも多いことが想定され、この意味ではその影響力を無視できないとする指摘もある。
[高須正郎・伊藤高史]
日本で,英語を主たる用語として発行される新聞。英字紙ともいう。1861年(文久1)6月,長崎在住の外国人のためにイギリス人ハンサードA.W.Hansardが創刊した《ナガサキ・シッピング・リスト・アンド・アドバタイザーThe Nagasaki Shipping List and Advertiser》(週2回刊)が最初。同時にこれは日本での最初の新聞でもあった。その後,横浜,神戸,東京などで次々と英字新聞が発刊されたが,これらはいずれも外国人によるもので,97年3月になって頭本(ずもと)元貞が伊藤博文の支援のもとに日本人による最初の英字紙《ジャパン・タイムズThe Japan Times》を発刊した。第2次大戦中は政府によって同紙1紙に統合されたが,戦後大手全国紙も英字紙を発行するようになった。現在,読者は外国人と日本人とが約半々で,日本語の新聞とは逆に,海外ニュースの紙面に占める比率が高い。投書欄もほとんどが外国人による投書で占められる。
執筆者:新井 直之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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