CCV(読み)シーシーブイ

デジタル大辞泉 「CCV」の意味・読み・例文・類語

シー‐シー‐ブイ【CCV】[control-configured vehicle]

control-configured vehicle制御本位航空機設計の初期段階から飛行制御を考慮して開発することにより、機体の小型化・軽量化、操縦性向上等を図った航空機をいう。

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改訂新版 世界大百科事典 「CCV」の意味・わかりやすい解説

CCV (シーシーブイ)

control configured vehicleの略。能動制御技術適用航空機と呼ばれることもある。従来の航空機では,操縦桿(かん)やペダルの動きは索や油圧によって舵面(だめん)に伝えられる。CCVは,コンピューターを介して操舵指令を電気信号の形で舵面に伝達することを前提として設計された航空機であり,従来実現が不可能であった運動性や経済性を実現しようとするものである。CCVは,(1)航空機の燃料節約の重要性が増したこと,(2)戦闘機の運動性能に対する要求がきわめて高度化してきたこと,などにより1950年代に研究が開始され,70年代より実用化が始まった。CCVに適用される技術を能動制御技術active control technologyと呼び,主要なものとして,以下のものがある。(1)索や油圧による機械的な操縦系統の代りに電気的な系統を使用し,安定した操縦を実現するために機上コンピューターを利用するフライ・バイ・ワイヤfly-by-wire(電気操縦装置)。これにより,操縦性および整備性の向上,機体重量の軽減などが可能となる。戦闘機に本格的に採用されたのは,70年代末期のマクダネル・ダグラスF18であり,近年,旅客機にも使用されるようになっている。(2)人間が操縦する従来の航空機では,機体に空力的な安定性をもたせ姿勢が変化しても元の状態に復元するよう作られる。しかし,安定性を良くすると操縦性,すなわち操舵に対する機体の応答が悪くなる。航空機の操縦系統にコンピューターを使用すれば,人間では行うことが難しい微妙な制御が可能となるため,機体の安定性を弱めることができ,機体規模を縮小させ空気抵抗を減少させることができる。これを静安定補償relaxed static stabilityと呼ぶ。(3)コンピューターで制御された昇降舵フラップ,水平カナード(先尾翼)の操舵により,上下方向の運動を行わせ,離着陸時の容易な操縦,戦闘能力の向上などに寄与する直接揚力制御direct lift control(図1)。(4)コンピューターで制御された方向舵および垂直カナードの操舵により,左右方向の運動を行わせる直接横力制御direct side force control(図2)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「CCV」の意味・わかりやすい解説

CCV
しーしーぶい

control-configured vehicleの略で、航空機の発展方向の一つと考えられる飛行機。現在も機上に取り付けられているコンピュータや電気・油圧系統を多重装備することによって、たとえ一部に故障を生じてもシステムの機能を正常に保たせることができる。この特性を利用すると、飛行機固有の安定性や機体の強度を弱くしても、舵(かじ)を自動的に動かすことによってそれを補うことができ、機体を小型・軽量化して、生産・運航コストの節減や性能の向上を図ることができる。このような自動化された操縦装置をあらかじめ考慮に入れて設計された飛行機をCCVとよんでいる。

 すなわち、現在の普通の飛行機では固有の安定性を保たせるため、必要とするよりやや大きめの尾翼をもたせているが、CCVでは常時自動的に舵面を操作して姿勢を保たせるので、尾翼の面積を最小限の大きさに抑えることができ、空気抵抗や重量を節減できる。また、舵面をコンピュータ操作させることで、従来とまったく異なった運動性をもたせることができる。たとえば、飛行機の姿勢を一定に保ったまま飛行コースを変えたり、逆に機首方向をある角度に保ったまま一定のコースを維持して飛行したり、あるいは飛行コースに沿って姿勢を変えながら飛行するなどの運動ができ、その結果着陸進入や戦闘行動が容易になる。現在はまだ実用化されてはいないが、この特徴は軍用機にとって大きな魅力であるため、世界各国でさかんに研究・開発が続けられている。

[落合一夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「CCV」の意味・わかりやすい解説

CCV
シーシーブイ
control configured vehicle

戦闘機などの運動能力を高めたり,突風の影響を減らしたり,フラッタ振動の発生を抑えるために,主翼や操縦翼面を小さくしても安定性を維持できるよう,コンピュータによる能動的な制御を主体として設計された航空機。運動能力向上機とも呼ばれる。通常の飛行機ではまず安定性を考慮して尾翼の大きさや主翼の上反角を決め,それをどう操縦するかを考えて舵の大きさを決める。さもないと,操縦桿からちょっと手を離しただけで危険な状態に陥いることになり,安心して乗っていられない。しかし飛行機が機敏な動きをするためには,むしろ不安定な飛行機の方が都合がよい。そこで飛行性能にとって最も望ましい設計,たとえば翼を小さくするなどの形状を考えたうえで,コンピュータの自動制御技術によって自動的,人工的に安定性をもたせたのが CCVである。これで機体の小型化,軽量化,操縦性の向上がもたらされ,燃料費の節約,機体の疲労寿命の延長,離着陸時の安全性向上にもつながる。 (→安定性 , 操縦性 )

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