チーフ・フィナンシャル・オフィサーchief financial officerの略で、最高財務責任者と訳す。アメリカ型の企業統治組織形態をとる企業における役職名である。経理・財務部門の責任者であり、加えて経営企画部長の職務を兼務していることがアメリカ企業では多い。社外取締役に対して経営数値面から説明できる能力が求められる。しかし、日本企業では経営企画部長の職務を兼務することはまれである。
アメリカ型企業統治組織は、取締役会(ボード)と執行役(オフィサー)の2段階になっている。両方のメンバーとなるのが、社内取締役といわれる。社内取締役には、CFOのほかにCEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)が通常就任し、必要によりCTO(最高技術責任者)、CSO(最高戦略責任者)なども加わる。
日本では2003年(平成15)4月以降、大会社はアメリカ型の取締役会をモデルとした委員会等設置会社を導入できるようになったが、この制度導入前の経理・財務部門長をCFOという呼称に変更しただけであるケースが目だつ(委員会等設置会社は2006年に委員会設置会社に名称変更し、大会社の規模規制も撤廃)。日本企業では、高度な金融理論を十分に理解し、経営戦略に精通しているプロフェッショナルは数少ない。CFOの重要性が強調され、大学院でこの分野に関連したMBA(経営学修士号)コースが相次いで設けられたのは、このような理由による。さらに、日本企業の現会計監査機能は弱体であり、不正経理などの見逃しも相次いで発覚し、委員会設置会社の監査委員会によりその機能を強化しようとする意図もある。
日本企業においては、2009年12月に東京証券取引所が上場規定を改正して1名以上の独立役員を確保することを義務づけた。独立役員は、社外取締役または社外監査役から選出することとなっているが、これは増加する企業買収や第三者割当増資などのケースで、一般株主との利益相反がおこらないように発言・行動していくことが求められているためである。CFOの役割にも大きく影響していく。
一方アメリカ企業では、エンロンなどのようにCFOの暴走劇が増加している。複雑な会計ルールや高度化する金融技術などを駆使するCFOの業務執行を、監査委員会でも監査しきれなくなったためである。いかに実効ある会計監査ができるか、という制度確立への模索は、今後も続くと予測される。モラルが高く、プロフェッショナルなCFOの価値は高まっているといえる。
[丹羽哲夫]
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出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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