D型肝炎(読み)ディーがたかんえん(英語表記)hepatitis D

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

D型肝炎
ディーがたかんえん
hepatitis D

D型肝炎ウイルスB型肝炎ウイルスに重複感染したときに発症する肝炎D型肝炎ウイルスの存在は,1977年,B型肝炎ウイルスの保有者の肝組織内にこのウイルスとは別の抗原が見つかったことから明らかになった。当初,この抗原はデルタ抗原と名づけられたが,その後の研究で球状ウイルスであることが判明した。増殖するにはB型肝炎ウイルスの感染状態であることが必須で,B型肝炎の症状悪化の因子の一つである。抗体の検出率は地中海沿岸地方や中東,アマゾン流域などで高く,日本や台湾などは比較的低い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

D型肝炎
でぃーがたかんえん
hepatitis D

D型肝炎ウイルス(HDV:hepatitis D virus)に感染して発症する肝炎。HDVはB型肝炎ウイルス(HBV:hepatitis B virus)に感染している状態でのみ感染し、欠損ウイルス(不完全ウイルス)であるHDVに単独で感染することはない。すなわちHBVと同時にHDVに感染するか、HBVに感染している状態で重感染(重複感染)するかのいずれかである。経口感染することはなく血液や体液を介して感染する。同時感染の場合はB型とD型の複数の肝炎が急性に発症するため重症化する傾向が強く、肝臓壊死(えし)が急激に広範囲に広がり、肝不全を起こす劇症肝炎に陥る確率も高くなる。重感染の場合は、急性に発症したB型肝炎が慢性肝炎に移行し、慢性化したB型肝炎に急性のD型肝炎が加わり肝炎の急性増悪が多くみられ、D型肝炎もともに慢性化していく場合もある。いずれも肝硬変から肝癌(がん)へと重症化していく可能性があり注意が必要である。ほとんどはB型肝炎が治癒するとともにD型肝炎ウイルスの増殖もとまり治癒に向かう。HDV抗体陽性率は地域差があり、地中海地方や北欧、中東、アフリカ北東部で高く、日本ではまれである。[編集部]

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内科学 第10版の解説

D型肝炎(急性ウイルス性肝炎)

(1)D型肝炎
概念
 わずか1700塩基長の単鎖環状RNAをゲノムとしてもつ直径36 nmの有エンベロープ性で球状のD型肝炎ウイルス(科名unassigned;属名Deltavirus;種名hepatitis delta virus:HDV)によって惹起される肝炎がD型肝炎である.HDVには8種類の遺伝子型(genotypes)が存在する.そのうちペルーなどの南米諸国に局在するHDV-3が最も病原性が高く,日本を含む東アジア地域に局在するHDV-4は最も弱毒で,それ以外の地域に広く分布する遺伝子型の病原性は両者の中間であるとされている.
病態
 本ウイルスは,同一細胞内にB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)が存在せねば自己複製しえない欠陥(サテライト)ウイルス(defective(satellite)virus)であるから,HDVの感染者は同時にHBVの感染者でもある.すなわち,D型肝炎にはHDVとHBVの両ウイルスが関与している.
感染経路
 直上に述べた理由によりHDVの感染経路はHBVのそれとまったく同一である【⇨9-2-1)】.
臨床症状
 HDV感染には2つの態様がある.すなわち,まったく未感染であった人がHDVとHBVに同時に初感染する場合(同時感染,coinfection)と,すでにHBVに単独感染していた人が新たにHDVに感染する場合(重感染,superinfection)とである.もしHDV感染を診断するための検査(HDV抗体あるいはRNAの検出)をまったく行わなければ,coinfectionの見かけ上の病像は「急性B型肝炎」,一方superinfectionの方は「慢性B型肝炎の急性増悪」にしかみえない.
治療・予防
 HBVの同時存在なしにHDVの自己複製は起こらないため,B型肝炎に対する抗ウイルス療法は同時にD型肝炎に対する抗ウイルス療法となる.なぜなら「Bを消せばDも消える」からである.予防に関しても同様である.HDV粒子の表面を覆っている蛋白はHBVのそれ(HBsAg)の借り物であるから,B型肝炎ワクチンで誘導される抗体はHDV粒子にも結合する.結局D型肝炎はB型肝炎の「部分症」であるとする考え方が,現実的には有効であるといえる.[三代俊治]

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