E型肝炎ウイルスを原因とする感染症。発熱や体のだるさ、
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E型肝炎ウイルス感染によって肝臓に炎症が生じ、肝細胞の破壊、肝機能の低下を示す病気です。通常、急性肝炎として発症・治癒し、慢性化することはありませんが、近年、臓器移植後のレシピエント(臓器受領者)という限られた症例において慢性化し肝硬変へ進展する場合があることが報告されています。
主には、ウイルスに汚染された水や食品を飲食することにより感染します。本疾患は、アジアやアフリカなどの衛生環境不良な発展途上国で流行する急性肝炎であり、先進国では、発展途上国への旅行者が持ち帰る感染症と考えられてきました。
しかし、渡航歴のないE型肝炎症例の解析などから、日本にすみ着いたウイルスが存在すること、ブタ、イノシシ、シカなどの肉やレバーを生で食べることにより感染すること、輸血による感染も存在することなどが近年明らかにされてきています。
感染症法上、届け出対象となっており、年間40~70例の発症が報告されています。
感染後、2~9週間(平均6週間)の潜伏期間をおいて、発熱、
通常、1~2カ月の経過で完治しますが、まれに重症化、劇症化することがあり、1~2%の死亡率を示します。また、妊娠後期に感染すると劇症化率が高いという特徴をもち、死亡率が20%に達します。
急性肝炎の診断は、血液検査において肝酵素が急激に上昇することによります。ウイルス感染初期にのみ出現するIgM型やIgA型のE型肝炎ウイルス抗体ないしE型肝炎ウイルスの遺伝子が検出されれば、E型急性肝炎と診断されます。
E型肝炎特有の治療法はなく、急性期には入院、安静臥床を原則とし、自然治癒を待ちます。劇症化した場合は、それに応じた治療が行われます。食欲がなく経口摂取不能な場合は、ブドウ糖、ビタミンなどの輸液が行われます。なお、感染予防のためのワクチンはいまだ開発されていません。
発症前後の糞便にはウイルスが排出されるため、家庭内では手洗いを念入りにして排便後の衛生管理に注意を払う必要があります。
新井 雅裕, 三代 俊治
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
E型肝炎ウイルス(HEV:hepatitis E virus)に感染して発症する急性肝炎。A型肝炎に類似する肝炎で、A型肝炎ウイルス(HAV:hepatitis A virus)と同様に、糞便(ふんべん)や汚染された食物、飲料水などから経口感染する。2~10週間程度あるいはそれ以上の潜伏期間(平均6週間)を経て肝炎として発症し、流行性を示すことが多い。日本では50歳前後の中高年男性の発症が多く、高齢になるにつれて重症化する傾向がある。東南アジアや南アジア、中央アジア、中近東、中南米、アフリカなどの開発途上国に多く流行がみられる。日本ではほとんどがこれら地域への旅行者による輸入感染症とみられてきたが、近年になって野生のシカやイノシシの生肉を食べて感染した事例や、豚の生レバーからHEV遺伝子が検出されたという報告がある。症状としては黄疸(おうだん)のほか、発熱、倦怠(けんたい)感、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、腹痛、食欲不振、肝腫大(かんしゅだい)などが多くみられる。一般に4~8週で治癒し、慢性化することはない。ただし妊娠後期(第3期以降)の妊婦が罹患(りかん)すると重症化しやすく、劇症肝炎や肝不全を引き起こして死に至ることもある。感染の診断はE型肝炎ウイルス抗体の検出によるが、核酸増幅検査により血中E型肝炎ウイルスRNA(リボ核酸)を検出する方法が確実である。ほとんどは安静にすることにより治癒するが、急性期には対症療法しかない。
[編集部]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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