主題統覚検査または絵画統覚検査と訳され、わが国でも広く用いられている。マレーH. A. Murrayを中心とするハーバード大学の研究グループが考案した代表的な投影法の一種で、いくぶんあいまいな絵画を見せて、そこに描かれている人物や状況から想像による物語をつくらせ、その内容におのずと現れるその人独自の人格特性を把握しようとする方法である。
マレーの基本構想は、そうした物語のなかで、被検者が自分と同一視していると思われる主人公heroが示す欲求needと、そうした欲求を促進したり阻止したりする形で環境が働きかける圧力pressとの関係によって、その物語に備わる主題themeを把握し、さらに物語の結末の幸・不幸、登場人物の示す感情調などにも注目して、被検者の人格特性を分析する、というものである。その後、ワイアットF. Wyatt、ベラックL. Bellakなどによって独自の分析方法が提起されている。
また、ある程度具体的に人物や場面を描いた絵画を用いるので、適用する対象や目的に応じて異なる絵が必要であり、ハーバード版でも最初成人男子用20枚であったが、のちに女性用、少年・少女用、臨床用などの差し替え用カードが加えられたし、限定された目的のためのシリーズ、異なる文化圏での独自のシリーズなどがつくられた。わが国でも、早稲田(わせだ)大学版「絵画統覚検査」などの日本版が用いられている。現在では一般に、こうした変法を含めてTATとよんでいる。
[冨田正利]
主題(絵画)統覚検査と訳されている投影法形式の人格検査。thematic apperception testの略称。H.A.マレーとモーガンC.D.Morganが,1935年に初めて発表。その実施手続は,さまざまな状況を描いた絵30枚と白紙1枚のなかから,被検者の年齢や性別などによって20枚を選び,10枚ずつ2回に分けて提示し,過去,現在,未来といった時間的変化を含んだ物語を被検者に空想させるものである。その空想的物語の分析,解釈を通して,被検者の要求や要求への圧力,コンプレクスなどが明らかにされる。マレーらの解釈には彼の要求-圧力理論が基となっているが,他の研究者たちにより,さまざまな理論が提唱されており,使用される絵も異なっている。幼児用はCAT(children's apperception test)と呼ばれている。
執筆者:小川 俊樹
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…人間は投影(投射)という自我防衛機制をもっているので,あいまいな刺激の提示により,その人の要求や葛藤を把握し人格の理解に迫ることが可能になる。これが投影法であり,(1)視覚刺激法によるTAT,ロールシャハ・テスト,(2)言語刺激法による文章完成法,言語連想法,(3)表現活動による描画法,P‐Fスタディ,モザイク・テストなどがある。投影によらないものは客観的テストといわれ,統計的な標準化がその基準として理論を支えており,以下のようなものがある。…
…人格検査は人格研究の方法として発展したものであるが,今日みるような検査方法は力動的な人格論が台頭したことによるもので,日本では第2次大戦後,主としてアメリカよりの投影法の実験的・臨床的な知識の導入により教育,臨床,産業の分野において普及した。投影法の代表としてロールシャハ・テスト,TATがあげられ,前者は被験者の年齢,文化をこえて国際的に用いることが可能であるが,技法の習得,教育訓練に時間がかかるので,時代や経済状況によって消長がある。また投影法によらないものでは,コンピューター技術の導入により施行が簡便なので質問紙法が隆盛になったが,使用目的や対象者の質による制限がある。…
…パーソナリティ研究で著名なアメリカの心理学者で,TATの創案者。歴史学を学んだ後,1919年コロンビア大学医学部卒業。…
※「TAT」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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