X線鉱物学(読み)えっくすせんこうぶつがく

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

鉱物にX線を照射し、回折してくるX線を観測して鉱物を研究する学問。X線を照射される鉱物が単結晶の場合と、粉末状態(多結晶の集合)の場合とがあり、またX線回折を観測するにも、写真や計数管を使ったりする方法のほかに、イメージングプレートという、繰り返し使用できるシート状のものに記録させる方法がある。鉱物の同定にもっともよく使われる方法は、X線粉末回折法とよばれるもので、粉末試料から回折してくるX線を計数管で受け止め、反射角と強度を自記記録する装置によって行われる。反射角から結晶の網面間隔(dという記号で表される)が求められ、この値と強度は鉱物(結晶)の種類によってほぼ一定しているので同定が可能になる。また鉱物の結晶構造、すなわち原子配列を正確に知ろうとするためには、単結晶を用いて多量のX線回折の反射角と強度を知らねばならない。現在では完全自動化された四軸型の回折装置やCCDカメラを使った装置があり、何百何千というX線回折のデータを迅速にしかも高精度に得ることができるようになった。さらに大型コンピュータを利用することにより、膨大な計算を必要とする結晶構造解析が比較的容易になされるほどになっている。
 X線鉱物学は、1912年、ミュンヘン大学にいたラウエが創始したとされている。彼は、結晶体にX線を照射すれば回折現象をおこすのではないかと考え、実験を重ね、ついにラウエ斑(はん)点とよばれるX線回折の撮影に成功した。この功績により1914年にノーベル物理学賞が与えられた。ラウエの発見とほぼ同じころ、イギリスではブラッグ父子の研究が行われており、彼らは、結晶の原子配列に関する実際的な測定や、それらを知るために必要なX線分光器の制作などに力を注いでいた。これら物理学、鉱物学への貢献により、ブラッグ父子に対しても1915年にノーベル物理学賞が与えられた。その後、X線発生装置や回折装置の改良、動フィルム法(ワイゼンベルグ法やプレセッション法など)の考案など、次々と新しい手段が開発され現在に至っている。今日では結晶の原子配列を直接高分解能の電子顕微鏡で見ることができるようになったが、依然としてX線鉱物学の重要性は変わらない。[松原 聰]
『桜井敏雄著『X線結晶解析の手引き』(1983・裳華房) ▽真野倖一・神志那良雄著『パソコンによる結晶とX線回折――アナグリフによる結晶格子の理解』(1989・共立出版) ▽山中高光著『粉末X線回折による材料分析』(1993・講談社) ▽日本結晶学会「結晶解析ハンドブック」編集委員会編『結晶解析ハンドブック』(1999・共立出版) ▽安岡則武著『これならわかるX線結晶解析』(2000・化学同人) ▽日本分析化学会X線分析研究懇談会編、中井泉・泉富士夫編著『粉末X線解析の実際――リートベルト法入門』(2002・朝倉書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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