ドイツの高速列車。1970年代から、西ドイツの研究開発省、ドイツ連邦鉄道Deutsche Bundesbahn(DB)および車両メーカーが、最高時速400キロメートルを目ざす独自の高速試験列車ICE(Inter City Experimental)を開発、ドイツ鉄道150周年の1985年7月に完成した。ICEは1988年5月1日に時速406.9キロメートルの世界記録を達成した。これはその後フランスのTGV(テージェーベー)が1990年5月18日に達成した時速515.3キロメートルにより更新された。
高速列車の量産車は、ICE(Inter City Express)と命名され、電気機関車2両で客車12~14両を挟む編成を採用した。電気方式は交流15キロボルト16 2/3ヘルツ。営業運転は最高時速250キロメートルである。1991年6月にシュトゥットガルト―マンハイム間100キロメートルおよびハノーバー―ウュルツブルク間327キロメートルの新線を開業し、新線と在来線を使って、ミュンヘン―フランクフルト―ハンブルク間の高速列車の運行を開始した。新線は、旅客列車だけでなく貨物列車も運行する計画であったので、最急勾配(こうばい)は12.5‰(水平距離1000メートルに対し高さ12.5メートルの勾配)に抑えられた。ICEは列車の呼称であり、時速250キロメートル以上の高速新線はNBS(エヌベーエス)(Neubaustrecke)とよばれている。
1990年の東西ドイツ統合後、1994年1月からドイツ連邦鉄道(西ドイツ、DB)とドイツ国有鉄道(東ドイツ、DR)がドイツ鉄道(DB)に統合された。新しい首都ベルリンと各都市を結ぶ高速鉄道網整備計画も決定され、1998年9月にベルリン―ハノーバー間264キロメートルが開業し、さらにケルン―フランクフルト間216キロメートルも2002年に開業した。後者は旅客列車専用として40‰の急勾配(水平距離1000メートルに対し高さ40メートルの勾配)を走行している。
1997年からは旅客需要の少ない線区に使うため機関車1両、客車7両としたICE2が製造され、これに伴い、第一世代のICEは、ICE1と改称された。ケルン―フランクフルト間に使うICE3は8両編成の電車列車となり、最高運転時速330キロメートルである。ICE3は国内線用(交流15キロボルト16 2/3ヘルツ)のほか、国際線用の4電気方式(交流15キロボルト16 2/3ヘルツ、交流25キロボルト50ヘルツ、直流3000ボルト、直流1500ボルト)が製造され、オランダ、ベルギーやフランスに乗り入れている。2013年には英仏海峡トンネル経由のロンドン―ケルン、アムステルダム間等にも使用される計画である。また、曲線の多い在来線での速度向上のため、振子式のICE-Tも電車と気動車両方の方式で1999年から製造されている。車体デザインなどはICE3と同じである。
なお、1998年6月3日にエシェデでICE脱線事故(ICE1)が発生し、車体が道路の橋脚に激突し、死者101名(列車内での死亡96、病院での死亡5)の惨事となった。原因は、車輪の輪芯(りんしん)部分にゴムを使用した防振車輪の割損であった。2008年7月9日には、ケルンでICE-Tが車軸折損のため脱線している。
[佐藤芳彦]
『佐藤芳彦著『世界の高速鉄道』(1998・グランプリ出版)』▽『平川賢爾著『ドイツ高速鉄道脱線事故の真相』(2006・慧文社)』
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