日本大百科全書(ニッポニカ) 「TCP/IP」の意味・わかりやすい解説
TCP/IP
てぃーしーぴーあいぴー
インターネット等で標準的に用いられる通信プロトコル(通信規約)で、Transmission Control Protocol/Internet Protocolの略。TCPとIPの手続を組み合わせたもので、下記の4階層からできている。
第4層(アプリケーション層)は、ユーザーの操作の要求を受け、相手先への接続や応答を受け持つ。おもなプロトコルにはHTTP(HyperText Transfer Protocol)、FTP(File Transfer Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)などがある。
第3層(トランスポート層)は、受け取ったデータをどのアプリケーションに渡すかを判断して実行する。おもなプロトコルにはTCPとUDP(User Datagram Protocol)などがある。
第2層(インターネット層)は、IPアドレスのもとにIPプロトコルを用いてデータを転送する。おもなプロトコルにはIPやICMP(Internet Control Message Protocol)、ARP(Address Resolution Protocol)などがある。
第1層(物理層)は、データを電気や光信号に変換したりその逆を行ったりする。リンク層ともいう。
これらプロトコル群により、ネットワークの相互接続を可能にして世界的にさまざまな組織を管理する無料開放されたオープンネットワークが構成されたことから、TCP/IPプロトコルを基盤とするネットワークを、インターネットとよぶようになった。
TCP/IPは、アメリカ国防総省高等研究計画局(DARPA(ダーパ):Defense Advanced Research Projects Agency)が1975年に開発した相互通信ネットの標準通信規約から、1982年にアメリカ国防総省により標準通信規約に採用され、翌1983年にARPANET(アーパネット)(現在のインターネットの前身)の通信規約となった。仕様が公開されたため、1970年代にUNIX(ユニックス)(ベル研究所が開発したオペレーティングシステム)のカリフォルニア大学バークリー校版であるBSD(Berkeley Software Distribution)の通信プロトコルとして採用されるとともに、LAN(ラン)(local area network)の普及により事実上の国際標準の地位を確立した。以後は世界でもっとも普及しているプロトコルとして、インターネットのみならずプライベート・ネットワークとしてのイントラネットの構築などにも応用されている。
なお、通信プロトコルにはほかに、国際標準化機構(ISO)が7階層にまとめたOSI参照モデルがあるが、TCP/IPが1990年代中ごろから急速に普及したため、このモデルによる製品はあまり普及しなかった。しかし、OSI参照モデルはTCP/IPの考え方の基本として残り、お互いに相補う形で落ち着いている。
[岩田倫典 2015年6月17日]
『村山公保著『基礎からわかるTCP/IP――ネットワークコンピューティング入門』第2版(2007・オーム社)』