翻訳|chordate
脊索動物門Chordataに属する動物の総称で,胚にはつねに脊索ができるのでこの名がある。動物界の重要な1分類群で,ほとんどあらゆる環境に生息し,適応放散が著しく,形態がきわめて変化に富み,体長は尾索類の1mmからシロナガスクジラの30m以上に及ぶ。尾索(被囊)亜門(ホヤ,サルパなど),頭索(無頭)亜門(ナメクジウオ),脊椎(有頭)動物亜門の3亜門に分けられるが,これらの亜門が系統的に直列的な関係にあるのか,それとも並列的な関係にあるのか,いまだ十分には解明されていない。これらはすべて,原口が肛門になり,二次的にできた口をもつ新口(後口)動物の一つで,体は体節に分かれ,少なくとも一生のうちのある時期には体が左右相称で,前部と後部,背側と腹側が定まり,咽頭(前腸)の両側に対をなした鰓裂(さいれつ)がある。鰓裂は原始的なものでは口から入った水の出口で,呼吸のほか,プランクトンのような餌をろ過するのに役だつが,高等なものでは胚にのみ見られる。脊索は柔らかい脊索細胞が繊維質の鞘のなかに詰まってできた棒状の支持器官で,分節することなく腸管の背側にあり,頭索類やヤツメウナギなどでは終生見られるが,尾索類では幼生にのみあり,多くの脊椎動物では胚や幼生の時期を過ぎると椎骨からなる脊柱で置き換えられる。脊索の背方には管状の中枢神経系がある。血管系は閉鎖血管系で,高等なものでは心臓が発達する。排出器官は腎管である。
→原索動物 →脊椎動物
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物分類上、原索動物門と脊椎(せきつい)動物門とをあわせた動物群に対する名称。脊索動物は、発生の初期に脊索を生じるのが第一の特徴で、脊索が終生続くものと、椎骨に置き換えられて縮小するものとがある。第二の特徴は背側を走る神経管で、脊椎動物では脳と脊髄に分かれる。第三の特徴は、少なくとも発生初期には咽頭(いんとう)部に鰓裂(さいれつ)が出現することである。鰓裂はこの門の動物の祖先が水生であったことを示す。
脊索動物は左右相称で、体節構造が脊柱の分節的構造や筋肉の配列などに認められる。有性生殖を行い、ごくわずかの種類が単為生殖をするが、ほとんどのものは両性生殖による。尾索動物(ホヤ類)の多くは海産で底生性であり、幼生期にのみ脊索と神経索をもっているものが多い。浮遊性の尾虫類(オタマボヤなど)は成虫でも尾部に脊索をもっている。頭索動物(ナメクジウオなど)は体の全長に及ぶ脊索と神経索を終生維持している。尾索類、頭索類以外の脊索動物、すなわち脊椎動物は脳とそれを包む脳頭蓋(とうがい)をもつので有頭類という。有頭類では脊索が脊髄の前端まで達するが、脳の位置までは進まない点でも頭索類(無頭類ともよぶ)と異なる。
なお、分類上、脊索動物を一門とし、尾索動物、頭索動物、脊椎動物を三亜門としてこの門に含める考え方や、このうち脊椎動物亜門を設けず、無顎(むがく)類と顎口類の二亜門を加えて合計四亜門とする研究者もある。
[川島誠一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ギボシムシなど約95種からなる〈半索動物門〉は,体が前体(吻),中体(襟),後体(腹または尾)の3部に分かれ,前体には無対の,中体と後体にはそれぞれ1対の体腔がある。口と腸があり,呼吸は脊索動物と同様,前腸にできた鰓裂(さいれつ)で行う。血管系と心臓があり,主部は腹側に位置し,神経系は腹側にもあるが,主部は背側のものである。…
…体内に脊椎を終生もたない動物の総称。原索動物が一時的にも脊索を体の背部にもつことで脊椎動物といっしょにされて脊索(せきさく)動物Chordataという1門にされることもあるが,一般的に原索動物は無脊椎動物に含められている。 現在,無脊椎動物は約95万種が知られていて,そのうち75万種が昆虫を含む節足動物である。…
※「脊索動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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