脊椎動物のうち,もっとも原始的な形質をもつ無顎口上綱Agnathaに属する魚類(無顎類)はデボン紀末までにほとんど絶滅し,残った現存種を含む唯一の綱が円口類Cyclostomiである。メクラウナギ目,ヤツメウナギ目がこの綱に属する。いずれも体は細長い円筒形で,皮膚は柔軟で,つねに粘液を分泌しているため表面は粘滑であり,うろこはない。口はまるく吸盤状で,上下の両顎骨はない。円口類の名称もこれによる。口の中に角質の歯を備え,他の動物の体表に吸着したうえ,この歯を突出させて肉を食い血液を吸う。また,強い水流の中でも口で地物に吸いつき流されることはない。外鼻孔は1個で頭の背側中央または吻端(ふんたん)に開く。その内側ににおいを感ずる嗅囊がある。これがメクラウナギ目の魚類では内鼻孔で口腔に通じているので,物に吸着しているときでも鼻孔を通して呼吸水を吸入することができる。えらは袋状で6~15対あり,外鰓孔(がいさいこう)は1~15対。胸びれ,腹びれ,尻びれはない。骨格は軟骨性。脊柱は体節的な椎体がなく,肋骨もない。内耳には二半規管がある。心臓は1心房1心室。消化管は口から肛門まで直走し,胃は発達しない。腸には縦走皮褶またはらせん弁があって,消化管内容物との接触面積を広くしているので消化吸収効率がよい。腎臓は中腎。雌雄異体であるが,まれに同体のものもある。生殖巣は1個。ヤツメウナギ類はアンモシーテスammocoetesと呼ばれる幼生の時期を3~7年間過ごした後に変態して成体の形になるが,メクラウナギ類の発生は直達である。生態的には,海にすむもの,海と川の間を回遊するもの,陸封性のものがある。メクラウナギ目にはメクラウナギ,ヌタウナギなど,ヤツメウナギ目にはカワヤツメ,スナヤツメなどの種類がある。
→魚類 →無顎類
執筆者:日比谷 京
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
無顎(むがく)上綱Agnathaのなかの現生種に対して用いられていた分類名。動物分類学上、脊索(せきさく)動物門のヤツメウナギ類とヌタウナギ類に属するもっとも原始的な魚類の総称であったが、化石種を含めた分類体系を構築するなかで、ヤツメウナギ類は頭甲綱に、ヌタウナギ類はヌタウナギ綱になった。両類をまとめた円口類は、正式な分類名ではないが、便利な用語として慣習的に使われることがある。しかしこの類の分類体系は研究者によって異なり、きわめて流動的である。この類の体はウナギ型で皮膚は滑らかである。口は円形で吸盤状で、明瞭(めいりょう)な両あごをもたない。えらは袋状で5~15対、外鰓孔(がいさいこう)は1~15対。背びれと尾びれはあるが、胸びれや腹びれはない。魚類に含まれているが、あごに骨がなく、外鼻孔や生殖腺(せん)が無対であるなどの特徴から、現生の魚類とは大きく異なる。この類はそれぞれで古生代に栄えた魚類の特徴を現在も保持している点で「生きた化石」といえる。淡水や海洋に分布し、魚類や大形の水生動物に吸着し、肉をそぎ取るように食べるほか、体液も吸う。このため、サケ・マス類など有用魚類を大量に死滅させることがある。
[落合 明・尼岡邦夫 2015年6月17日]
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