バールベック(読み)ばーるべっく(英語表記)Baalbek

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バールベック」の意味・わかりやすい解説

バールベック
Baalbek

レバノン中部,ビカー県の標高 1160mにある町。アンティレバノン山脈の西麓,シリアの首都ダマスカスの北北西約 56km,ベイルート東北東 60kmに位置する。古代にフェニキア人が太陽神バールを祭る大神殿を築いたことからヘリオポリス (ギリシア語で「太陽の町」) と呼ばれた。かつてはたびたび侵入者の略奪にあい,637年にアラブの統治下に入って,王朝は変ったが,現在までイスラム教徒の町である。 1170年と 1759年の大地震では大きな損害を受けた。第1次世界大戦後のフランス委任統治下ではレバノンに編入された。農産物の集産地,避暑地として知られるほか,ローマ時代は商業都市として繁栄したので,広大な遺跡が現存する観光地としても有名。ローマ人はバールをジュピターと同一視したので,ジュピターの大神殿跡も残り,ほかにバッカスの神殿,ビーナスの神殿もある。イスラム関係では古代の石材を利用したモスクの廃虚や城塞も残っている。 1984年世界遺産の文化遺産に登録。人口1万 4000 (1982推計) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「バールベック」の意味・わかりやすい解説

バールベック
ばーるべっく
Baalbek

レバノンを南北に両断するベカー渓谷の北部、ベイルートから約90キロメートルに位置する小都市で、ローマ時代の遺跡で知られている。その名はベカーのバール(セム人に尊崇された天候神ハダド)を意味している。ローマ人はこの神をユピテルと同一視し、紀元前1世紀から後4世紀にかけて何人かのローマ皇帝たちが巨大なユピテル神殿とバッカス神殿を造営した。ユピテル神殿は六角形中庭、祭壇中庭、内陣からなり、今日残る内陣の6本の石柱(元は54本)は直径2.2メートル、高さ20メートルあり、レバノン山脈を背景に建つ姿は絶景とされている。ほかに近くにウェヌス(ビーナス)へ捧(ささ)げられたといわれる美麗な小神殿などがある。この遺跡は1984年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

矢島文夫


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