翻訳|wombat
哺乳(ほにゅう)綱有袋目ウォンバット科に属する動物の総称。同科Vombatidaeの仲間はオーストラリアとタスマニア島に分布。大きさは種により非常に異なり、体形はアナグマに似てずんぐりしている。尾はほとんどなく、前足、後足ともに5本の指があり、後足の第1指以外には頑丈なつめがあって、穴を掘るのに適している。育児嚢(のう)は後方に開口し、中に1対の乳頭がある。丘陵地帯に普通単独で生活し、夜行性で、昼間は巣穴で休息している。おもに根、地下茎、草を食べる。1産1子で、子は育児嚢内で育てられ、完全に毛が生えてから外へ出る。性質はおとなしく、人によく慣れる。わりあい長生きで、26年間飼育された記録がある。3~5種に分類される。
ヒメウォンバットVombatus ursinusはタスマニア島とバス海峡の小島に分布する。小形で、頭胴長67~95センチメートル、体重11~13キログラム、鼻先に毛がない。体毛は柔らかく下毛が多い。体色は灰色、薄い黄褐色、黒色などがある。オーストラリアウォンバットV. platyrrhinusはオーストラリア南東部に分布する。前種に似ているが大形で、頭胴長95~115センチメートル、体重36キログラムぐらいになる。鼻先に毛がない。体毛は硬く、下毛が少ない。体色は黄土色、黄土色と黒色の霜降りなどがある。ケバナウォンバットLasiorhinus latifronsはサウス・オーストラリア州の南半分に分布する。頭胴長87~88センチメートル、体重25~27キログラム。鼻先にビロード状で白色の毛が生えている。体毛は長く柔らかい。体色は灰色である。
[中里竜二]
齧歯(げつし)類に似た歯をもつ穴居性の有袋類。有袋目ウォンバット科Vombatidaeに属する哺乳類の総称で,ヒメウォンバットVombatus ursinus,ミナミケバナウォンバットLasiorhinus latifrons,キタケバナウォンバットL.krefftiiの3種がある。オーストラリア南東部とタスマニア島に分布する。体長70~120cmで尾は痕跡的。ずんぐりとした体,短くがんじょうな四肢,強力なかぎづめは穴掘りに適する。歯根がなく,終生のび続ける門歯は大きくがんじょうで,植物などをかじるのに適する。丘陵や砂地にすみ,繁殖期以外は単独で生活する。日中は地中に掘った,ときに長さ30m以上に達する巣穴で眠る。夜に巣穴を出て,踏みなれた道を通って採食に出かけ草や根を食べる。動きは意外とすばやく,また,人にもよくなれる。雌は5~7月に1子を生む。子は半年間育児囊で育てられる。両種とも数が非常に減少しており,とくにケバナウォンバットは絶滅が心配される。
執筆者:今泉 吉晴
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…熱帯林には多くの種の動物がすみ個体数が少ないので,森林の破壊で絶滅する恐れが多い。オーストラリアのウォンバットはウシによる生息地の破壊により,タズナツメオワラビーはイヌとキツネに捕食されてともに激減した。ニューギニアのナガハシハリモグラ,キノボリカンガルーなどは狩猟により,南アメリカのメガネグマはトウモロコシの,タテガミオオカミはニワトリの害獣として駆除されて激減し,ライオンタマリンはペット,動物園の展示,医学用実験動物などに1960年ころから年間200~300頭も輸出され,1981年には生息数が100頭以下と推定される危険な状態になった。…
※「ウォンバット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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