翻訳|camp
キャンピングcamping、野営または露営ともいい、テントあるいは簡単な小屋がけなどで、野外において一時的な生活をすること。旅行や登山のためにグループや個人で単に一時的な宿泊をするものから、一定のプログラムをもって野外で共同生活を行い、大自然の中で学習と活動を通してお互いに人格を高めあっていく組織的な野外活動までの総称として用いられる。キャンプの語義は「同志と協同生活をする」ことで、寝食をともにする生活を通して自己を見つめ、協調性や連帯性、友情、責任、奉仕などを学び、ものの見方、考え方を確立する。さらに、大自然の中で、天文、地形、動植物などの学習を通して、その美しさ、偉大さ、厳しさを知り、いろいろな技術を駆使して創造的活動を行い、また、登山、水泳、釣りなどの野外活動によって体を鍛えることにもなる。大自然とのかかわりのなかで、人間同士が触れ合い、相互理解を深め、さらに社会性を発展させる機会とするところにキャンプの意義がある。
利用する宿泊施設としては、テントを利用するもののほかに、固定したバンガロー、コテージ、ヒュッテなどを利用するもの、岩小屋など自然の地物を利用するもの、簡易なツェルトザックなどでビバーク(不時露営)するもの、積雪期に雪洞やイグルー(とくにカナダ北東部で利用される雪小屋のこと)を利用するものなどがある。第二次世界大戦後は、自動車にテントを積んだり、キャンピングカーを利用してキャンプ場を回り歩くオートキャンプも盛んになった。
[徳久球雄]
キャンプに教育的意義を認め、一定のプログラムのもとで集団生活を行うようになったのは19世紀後半で、南北戦争(1861~65)のころアメリカ・コネティカット州ガナリーにおいて、フレデリック・ウイリアム・ガンFrederick William Gunnが子供たちを集めてキャンプを開いたのが最初であるといわれている。YMCAのキャンプは1881年ニューヨークのブルックリンYMCAで始められ、F・ダドレーに受け継がれて盛んになった。ヨーロッパにおいては、1896年ベルリンにおこったワンダーフォーゲル運動、1910年に始まるユースホステル運動がキャンプを盛んにした。
日本においては、1922年(大正11)YMCAが日光中禅寺湖畔で少年キャンプを行ったのが最初である。第二次世界大戦後、学校キャンプが盛んになり、1966年(昭和41)には日本キャンプ協会が設立され、積極的にキャンプの普及啓蒙(けいもう)を行い、今日に至っている。
[徳久球雄]
一定の目標をもち、意図的に組織された集団が、一定のプログラムのもとで集団生活を行うもので、学校の教育活動の一環として行う学校キャンプ、国あるいは市町村などが社会教育のプログラムとして行う教育キャンプ、YMCA、YWCAなどが行う宗教キャンプ、ボーイスカウトその他の団体が行う団体キャンプ、セツルメント等福祉施設のキャンプなどのほか、補導キャンプ、調査キャンプ、ワークキャンプ、スポーツ団体の合宿キャンプなど各種のものがある。登山のためのキャンプは、登山を目的として宿泊施設のないところでキャンプするものであり、やや性質を異にするが、これもキャンプ活動の一つといえよう。
[徳久球雄]
組織でなく個人または少人数のグループで野外に出てキャンプを行うことは古くから行われてきたが、20世紀後半、キャンプそのものが独立して楽しまれるようになった。さらに欧米ではこれがオートキャンプの形で盛んになり、日本でも1966年(昭和41)から発達、家族旅行の中心形態の一つとなっている。
[徳久球雄]
用具・服装は第一に清潔、じょうぶ、軽便、安全であることが必要である。
キャンプ地の選定には、自然的条件として、(1)なるべく平坦(へいたん)な土地、(2)湿度の低いこと、(3)風当りが少ないこと、(4)洪水や雪崩(なだれ)などの危険のないこと、(5)清潔な水の得やすいこと、(6)燃料の得やすいこと、(7)毒虫などの少ないこと、などが必要である。また人間側の条件として、(1)人家にあまり近くなく清潔なこと、(2)騒音の少ないこと、(3)風紀のよいこと、などがあげられよう。
[徳久球雄]
三角型、屋根型、家型、ウィンパー型、片流れ型、かまぼこ型、ドーム型などがある。材料は綿が多く用いられてきたが、現在はナイロン、ビニロン、テトロンなどが、重さ、防水性、強度の点で優れていることから多く用いられる。
[徳久球雄]
キャンプはプログラムがたいせつである。生活時間の規律を守り、登山やオリエンテーリングなどの活動と自然観察、創造的活動、親睦(しんぼく)活動をうまく組み合わせる。初心者は炊事に多くの時間がかかるので注意する。また日常の生活と異なった環境下なので、全員の健康管理がリーダーにとって重要な仕事となる。睡眠は少なくとも7時間はとる。天候も考えて、弾力的な運営が必要で、そのためには指導組織を確立しておく必要がある。
[徳久球雄]
キャンプのプログラムのなかで、友情、だんらんのため、またキャンプの一つの儀式として行われるもので、これにより、キャンプの印象は深く心に刻まれ、人間関係はより強固なものとなる。内容的には、儀式的・精神的内容のものと、レクリエーション的内容のものとに大別される。
座席は、北極星の輝く北側が上席で、そこに営火長が座り、その右に司会者、左にリーダーが座る。あとの席は適宜だが、ファイアキーパーがつねに営火を見守り、強弱を調整し、プログラム終了とともに燃え終わるようにする。ファイア(営火)の形態は薪を井桁(いげた)に組むのを通例としている。そのプログラムの一例をあげると、(1)入場(キャンパー着席・営火到着)、(2)点火、(3)キャンプソング、(4)キャンプスピリットについての話(営火長)、(5)誓い(キャンパーはキャンプステッキを持つ)、(6)キャンプソング、(7)だんらんやレクリエーション(歌・スタンツゲームなど)、(8)キャンプソング(にぎやかなもの、しだいに静かなもの)、(9)退場。
参加者全員に、キャンプファイアの意義を理解させるとともに、キャンプファイア場入場から退場までの間のマナーや進行順序などを、よく知らせておかなければならない。
[徳久球雄]
キャンプは野外生活なので、開放的になり、生活規律が乱れやすい。自己の楽しみと自然との融合をたいせつにして、自己を磨くことはもちろんだが、その前提には、他人の迷惑にならない、共同生活の責任を果たす、自然を汚さない、という基本的なマナーがたいせつである。大自然の中で生活するとき、人間は謙虚な思いをもつが、これをマナーの基本的な理念として、お互いにマナーを守ることが必要である。
[徳久球雄]
『全国少年自然の家連絡協議会編『野外活動の計画と展開』(1980・第一法規出版)』▽『日本キャンプ協会編・刊『キャンプ指導の手引』(1982)』
キャンピングcamping,野営または露営ともいい,野外における一時的な生活をすること。テント利用のほか,バンガロー,コテージ,ヒュッテなどを利用するものや岩小屋など自然の地物を利用するものがあり,また登山の場合,簡単なツェルトザックなどでビバークするもの,積雪期に雪洞やイグルー(雪や氷のブロックを積み上げてつくったドーム型の住居)を利用するもの,宿泊設備を何も持たない野営なども広義には含んでいる。軍隊の一時的居住などを称することもある。第2次世界大戦後は,自転車や自動車にテントを積んでキャンプ場を回り歩くオートキャンプも,ヨーロッパ,アメリカを中心に盛んになった。キャンプの本来的意味は〈同志と協同生活をする〉ことである。キャンプ生活を通して,自己を見つめ,協調性や連帯性,友情,責任,奉仕などを学び,物の見方,考え方を確立してゆくのである。また生涯の仲間をつくることもあり,さらに人生観,価値観を変革させる可能性も十分にもっている。こうしたキャンプ生活の条件の第1としてあげられるのは,美しい自然環境のもとで行われることである。人為的,装置化された都会生活から離れ,大自然の中で生活することは,大きな想像力とたくましい創造的活動が要求される。不便ではあるが,素朴で潤いがあり,勇気と活力を通じて自然に親しみ,自然の美しさ,偉大さ,厳しさを知ることができると同時に,登山,水泳,釣りなどの野外活動によって体を鍛えることにもなる。
人類はその歴史の中で,長いあいだキャンプ生活を体験してきたといえる。その自然との共存体験を近代産業社会の中で再体験するものとして,キャンプは生まれた。キャンプに教育的意義を認め,一定のプログラムのもとで集団生活を行うようになったのは19世紀後半である。1861年アメリカのコネティカット州ガナリーで,ガンFrederick William Gunnが子どもたちを集めて学校キャンプを開いたのが最初であるといわれている。YMCAのキャンプは,81年ニューヨーク,ブルックリンYMCAで始められ,F.ダドリーに受け継がれて盛んになった。ヨーロッパでは,96年ベルリンに起こったワンダーフォーゲル運動,1910年に始まるユース・ホステル運動がキャンプを盛んにした。
日本では,明治から大正にかけての自由教育の気運の中で,スポーツも多く取り入れられ,その一つとしてキャンプが紹介されて新しい教育活動として推進されることになる。22年YMCAが日光中禅寺湖畔で少年キャンプを行ったのが,全国的な規模での最初のキャンプである。さらに第2次世界大戦後は学校キャンプが盛んになった。戦後の混乱期に,青少年団体,新聞社などが中心となって民間のキャンプが大きく成長したが,行政側でも,55年〈教育キャンプ指導者中央講習会〉を開くなどしてキャンプ運動を推進してきている。65年には日本キャンプ協会が設立され,積極的にキャンプの普及啓蒙を行い,全国に支部が設けられ今日にいたっている。また72年には日本オートキャンプ協会も設けられた。現在ではボーイ・スカウト,ガール・スカウト,ユース・ホステル,日本レクリエーション協会などとともに野外活動の組織的指導が重視され,97年野外教育学会も設立された。
キャンプは大別して,組織的なキャンプと個人的,家庭的なキャンプに分けられる。
(1)組織キャンプ 一定の目標をもち,意図的に組織された集団が,一定のプログラムのもとで集団生活を行うものである。現在では,学校の教育活動の一環として行う学校キャンプ,国あるいは市町村などが社会教育のプログラムとして行う教育キャンプ,YMCA,YWCAなどが宗教的行事を盛り込んで行う宗教キャンプ,ボーイ・スカウトその他の団体が行う団体キャンプ,セツルメントなど福祉施設のキャンプのほか,補導キャンプ,調査キャンプ,ワークキャンプ,スポーツ団体の合宿キャンプなど各種のものがある。登山の目的のためにテントを張る登山キャンプはやや性質を異にするが,これもキャンプ活動の一つといえよう。このように各種のキャンプは小は数人のものから大は数百,数千人にまで及ぶものがある。
(2)個人,家庭キャンプ 組織的でなく,個人または少数のグループで野外に出てキャンプを行うことは古くから行われ,とくに登山におけるキャンプ生活がその始まりといえよう。しかし20世紀後半になって,キャンプそのものが独立して楽しまれるようになり,健全なレクリエーションとして認識されるようになった。ヨーロッパやアメリカでは急速にオートキャンプ場が建設され,家族ぐるみでキャンプを楽しむことが盛んになった。日本では高原あるいは山麓にキャンプ場が設けられ,個人的なグループや家族でキャンプすることが行われるようになったが,施設の点では登山キャンプの延長で,ヨーロッパやアメリカと比べ,まだ非常に劣っている面が多い。(コラム参照)
執筆者:徳久 球雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ミサイルの配備方法により,奇襲攻撃に弱いことから地上配備のものを軟性基地,これに対して地中から発射可能にしたものを硬性基地,ポラリス型原子力潜水艦等で水中発射可能なものを水中基地と呼ぶことがある。軍事基地は英語ではふつうベースbaseといわれるが,アメリカ軍が使用する類似語としてバラックbarrack,キャンプcamp,フォートfortなどがある。これらはそれぞれ兵舎,一時的な駐留地,堡塁などの原義があり,base(基地,根拠地)と多少ニュアンスがことなる。…
※「キャンプ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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